容器側の想定を超えて
食べ物と食器をずらしてみるという今回の試み。続いての食器はこれだ。
寿司桶だ。「寿司桶」という名前からして、もう寿司専用ということがはっきりとわかる。前ページのお重は、うな重の他にもカツ重や海鮮丼などの他メニューの想定がまだあったが、これはどう考えても寿司に特化。
合羽橋では値段も700円ほどで意外に安い。自宅で寿司を握ることなどないのだが、「この値段なら欲しい」と、後先を考えず買ってしまった。
柄のテーマは「ひょうたんと駒」。ことわざの「ひょうたんから駒」の「駒」って馬のことだったよ うな気はするが、とにかくめでたい。今晩はこれで夕食を食べよう。
この日のメニューはミートソーススパゲティ。器の大きさとしてはちょうどよい感じにおさまっているように見える。しかし、やっぱり洋食の麺料理と寿司桶とはなじまない。
妙な感覚に包まれたまま食べ始める。クリームシチューの時と同様、いつも通りにおいしいスパゲティ。しばらく食べていると、違和感がなくなっていくことに気がついた。
実は、食べている者の視点からすると、寿司桶はそれらしい感じとして目に入ってこないのだ。「黒と赤の深い四角皿」という認識。
「意外と違和感ないなあ」と言うと、見ていた妻は「向かいで見てると、ものすごく変だよ」とのこと。本人よりも周りに違和感をまき散らしているわけだ。
この日はスパゲティだけではやや物足りなかったので、もう一品食べることにした。用意した器はこれだ。ざるそば・ざるうどんとがっちり結びついている食器だろう。これも合羽橋で190円と安かった。
商品についてきた使い方例の紙には、意外にも「使いみちいろいろ」という提案がされていた。一目見たときにはざるそばが想起されたこの器だが、写真では天ぷらも乗っている。
なるほど、言われてみればそういう組み合わせもありだ。しかし、今回はそういう想定を超えていくことこそが目的である。
ご飯とレトルトカレーを盛りつけてみた。「そば屋のカレーは意外とおいしい」という話はしばしば言われることだが、これは「そういうことじゃないだろ!」と言いたくなるビジュアルだ。
なじんでいるような、なじんでいないような。じっと見ているとわからなくなってくる。こういう風にカレーライスを出してくる蕎麦屋もあるんじゃないかと思ったり、やっぱりあり得ないと打ち消したりを心の中で繰り返す。
最後に試してみるのはラーメンどんぶり。さすが合羽橋、街の中華食堂でいかにも用いられているようなものが売られていた。
これで400円。これは寿司桶と違って、今後の日常生活で使いみちがありそうだ。使う度に中華料理屋気分になって、食事の雰囲気も出るだろう。
ただ、今回はその雰囲気を台無しにするような組み合わせを見つけることが目的。やってみたのはこれだ。
龍に囲まれたコーンフレークは、見た目こそなじまないものの、実際に食べてみると器としてちょうど食べやすい。実際、中国の人たちはこんな風にして朝食を食べてるんじゃないかとも思えたりする。
考えてみるとコーンフレーク、コマーシャルでやってるような白いボウルがうちにはなくて、いつも適当な食器で食べていた気がする。意外な結果だけれども、これからはこの組み合わせが自宅での定番になりそうだ。
日常に潜む違和感をあえて味わってみるという今回の試み。「今後はこれでいこう」と思わせる組み合わせの発見があったのも意外だった。
もやもやするのは今後の寿司桶の使いみち。来客があったらフルーツでも盛りつけて出してみようか。
でもそうすると、出前で取ったのを返してないと思われるかもしれない。器の角が丸みを帯びた直角ゆえに、残ったミートソースをすくいやすかったのも事実。またスパゲティを食べる時には使ってみようとも思う。