いくら粘っても火がつけられなかった私は、
しょうがなく水を含ませたタオルで体を拭いた。
夏とはいえ、ここは標高の高い山間部。
水風呂を浴びるには少々水が冷たすぎる。
切なさをかみ締めながら背中をごしごしとやっていたその時、
どこからともなく子どもの声が聞こえてきた。
正直、びっくりした。こんな山の中で子どもの声が聞こえるなんて。
まさか、それは昔この付近で亡くなった子どもの……
「あー中に誰かいるよー!」
驚きのあまり声が出そうになった。
恐る恐る振り返ると、戸の外には小学生らしい子どもがいた。
「ほらほら、静かに。迷惑でしょ。二人ずつ順番に行くよー」
「この先行くのー?怖いよぉー」
どうやらそれは、ボーイスカウトか何かの子どもたちのようであった。
夜のレクリエーションとして肝試しでもをやっているのだろう。
この近くにキャンプ場か何かあるのだろうか。
「嫌だぁ〜!怖い〜!行きたくないよぉ〜」
「じゃぁ、ここで待ってる?」
「それも嫌だぁ〜!」
子どもって面白いなぁと思いながら、私は夕食を準備に入った。 |