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ちしきの金曜日
 
廃村に泊まる

その山あいの集落は

まるで時が止まっていたかのように

ひっそりと、そう、ただひっそりと

静かにたたずんでいた

……いやはや、見事である。 無人となって久しいこの集落にこのような家屋が20戸以上、 今も立派に現存しているというのは凄いことだ。

それも、これらの家屋は、江戸時代末期から昭和初期にかけて建てられたものであるという。 それだけ歴史のある伝統的な家屋群なのだ。 これだけの家屋、維持だけでも相当大変だろうに。う〜ん、凄い。

私は興奮しながらこれらの民家を眺めつつ、自転車を押して集落の奥へ進んで行った。 集落の最も奥まった場所、そこに今晩私が泊まる民家がある。


今回お世話になる「八丁屋」

八丁屋と名は付いているものの、当然それは無人の民家。 この大平の家屋は、一つ一つに屋号がつけられ区別されている。 なんとも粋なはからいだ。

ちなみに、この八丁屋は江戸時代末期の建造であり、集落で最も古い家屋の一つ。 簡素ながらも洗練された美しい意匠であると私は思う。


さぁ、早速中へ入ってみよう


八丁屋内部の様子

どうだろう、なかなか良い感じではないだろうか。 囲炉裏にはだか電球と、雰囲気も凄くある。 まさに、これでもかというくらいの古民家だ。


シンプルながらチャーミングな囲炉裏 奥の障子の破け具合がちょっと生々しい奥の部屋
機能美溢れる炊事用かまど 風呂はレトロなボイラーで沸かす
トイレはもちろんボットン便所(使用した紙は持ち帰り) あちらこちらに隙間が多いのはご愛嬌


とにもかくにも火が必要だ

さて、荷物を下ろしたところで、まずは風呂に入って汗を流しさっぱりしたい。 ということは火の確保だ。よし、火を起こそう。

火を起こす為の薪は、集落の中央にある薪小屋で管理されている。 それを取りに行くのが火起こしの第一歩。


薪小屋も雰囲気たっぷり 中には薪がみっしり

ところで、なぜかこの薪小屋、鍵がかかっていなかった。 飯田で八丁屋の鍵を受け取った際、薪小屋の鍵も渡されていたので この薪小屋にも鍵がかかってるべきなのであるが。

そんなことを疑問に思っていたところ……


……あ!

いつの間にか誰かが着ていたようで、集落の入口近くの民家の横に見知らぬ車があった。 自分の他に人がいるということに安堵感を覚える反面、少しだけ不気味にも思う。

薪を運ぶがてら、その車がある民家の様子をちょっとだけ伺ってみると、 そこには楽しげに炊事を行う親子連れの姿があった。 なるほど、どうやらこの家族も本日の宿泊者であるようだ。 薪小屋の鍵を開けたのも、きっとこの人たちなのだろう。

と、その時、その家族のご主人と目が合った。 微妙な雰囲気の中、私は軽く会釈をし、そそくさと自分の民家へ帰っていく。 同じ場を共有するということで妙な親近感を覚える反面、 ちょっとばかり気まずくもある今日この頃だ。


 

 
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