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はっけんの水曜日
 
虹色のお城とビッチな旅人

(text by 大塚 幸代



あらすじ
東京での日常に、煮詰まっていたライター大塚、不思議なご縁に導かれ、ヨーロッパのど真ん中、チェコへの旅に。同行者はチェコ語ペラペラ梶原嬢(元スマップの森くん似)と、女編集者・ニシ嬢(井川遥似)。ビールがミネラルウォーターより安いこの地で、たんなる長い飲み会と化している旅行レポート、今回は第四回目。
キオスクにて勢いで買った、エロ新聞の内容が、ついにあきらかに!?
その1「チェコに、おばけを探しに」その2「ボヘミアの川よ、ヴルタヴァよ♪」その3「ガイコツ教会でメメントモリ!」)

 

私たちが到着したのは、チェスキー・クルムロフという街だった。
「世界一美しい街」と呼ばれている、ヴルタヴァ(モルダウ)川のほとりの、ちいさな街。なにしろ「世界遺産」だ。
お城が虹色に塗ってあって、お城のシンボルが薔薇なので薔薇マークが街のそこかしこにあって、修道院があって、不思議の国のアリスに出てくるような庭園もある。
普通の女子なら萌え萌えキュン死にするだろう、どハードコア・ロマンティックな、石畳の城下町だ。


なにしろ、こんな風景ですよ。街自体がテーマパークのよう。街の規模は、半日あれば回れる広さ。

お城(といっても、本当に王様が住んでたわけではないので、実は『邸宅』らしいんですが)、まじでマルチカラーに塗ってあります。いろんな色が使ってあるんだけど、みんな色薄めで、全体的には上品に見えるのが不思議。

……そんな街で、ホテルにチェックインするなり、プラハのキオスクで買った、エロ新聞を、広げるわたしたち。
美しすぎる街を見た反動なのかもしれない。
一刻も早く、チェコ・ディープカルチャー資料を……見ずにはいられなかった。


問題の物件。

……ええと、私たち、大人の女3人が見たところでは、爆笑してしまうような物件だったのだが、
当サイト、ほのぼのコンテンツ・デイリーポータルZは未成年のかたも見てらっしゃるかと思うので、「社会勉強」程度に、やんわり説明しておこうと思う。

  • 表紙。日本であれば、若い女の子の水着姿等なのだろうが、この新聞の場合はほぼ全裸。しかも、モデルさんとは言い難い感じの、肉付きのいい40歳前後の女性が、真っ昼間、家の庭かどこかでパンツを脱ぎかけているという、謎のポーズ。パンツを手にかけている都合上、上半身が前屈みになり、結果、たるみかけている胸がダヨーンと前に落ちていて、まるで「超ほそ長いおっぱい」に見えている。
  • 中ページグラビアは、もちろん修正なし。きれいめのモデルさんもいれば、かなり年配のモデルも。50歳くらいの女性が「台所用品でえっちなことをする」というテーマで写真を撮られており、トウモロコシなどを使用していた。チェコの伝統的お菓子、「オボツネー・クネドリーキ」を使ったカラミ写真もあった。また、男女まざって3人、男性同士など、「日本ではたぶん、趣味ごとに、雑誌が分れてるのではないか?」というものが、いっしょくたに載っていた。
  • パートナー募集欄の区分がすごかった。「彼が彼女を(募集)」「彼女が彼を(募集)」「彼氏が彼氏を(募集)」「彼女が彼女を(募集)」「彼が彼らを(募集)」「彼女が彼らを(募集)」「彼らが彼を(募集)」「彼らが彼女を(募集)」「彼らが彼らを(募集)」。
    つまり、普通の恋人募集から、同性愛のかた、特殊な趣味のサークルまで、幅広くカヴァーしているのだ。ちなみにこの募集告知の合間合間に、自己アピール写真(笑顔の写真や全裸写真、大切なとこのアップまで)が載っていた。

愛ある生活を、求める人たちのページ。

「ああああ、このパートナー募集ページ、教材に良さそう! 
あのね、チェコ語は人称代名詞が7つ、変化するんですよ。『彼が彼らを〜』とかっていう部分は、いちばん覚えにくいところなんです」
実は梶原さん、東京と京都でチェコ語のクラスをやっているので、先生でもあるのだ。
「これ見たら、イッパツで覚えるかもねえ。すごいインパクトだし」
「でも、チェコ語習ってるかたって、可愛い感じの、雑貨とかアートとか好きな女子が多いんですよね?」
「そうなんですよねえ」
……私も、チェコがらみの会合に出たことがあるので、知っている。チェコ好きの女子は、可愛い子が多いのだ。シモネタなんかもちろん、苦手だと思う。
「じゃあ、これ見せたら、ドン引きですかねえ」
「ドン引きかなあ」
「ドン引きかしらねえ」
ドン引きでしょう、間違いなく。


もちろん食事は、またまたビール。この地方の自ビールは、もともと修道院が作ってたものだそう。修道僧がビールですよ! やはりチェコでのビールの存在って、日本でのビールの存在と、違いすぎるのかも。

つまみはチェコ名物、ソーセージの酢漬け。これ、チェコ語では「どざえもん」というネーミングだそうです。チェコ人のセンスって、そういうグロがらみのものが多い気が……。右写真は、こちらも有名な郷土料理、鱒のフライ。海のない国なので、川魚がポピュラーです。

明けて翌日。
この日は週末で、土産物屋さんの多くが、閉まっているか、早じまいで、ショッピングがあんまり出来なかった。「まだ、観光地としては、洗練されてないんだなあ…」と思いながら、ゆっくりと、お城を見たりして、歩きまわった。


土産物屋さん一例、コヒノール直営店、有名文具メーカーです。えんぴつの看板がキュート。ココ、東京日本橋にも直営店あるらしいです。興味あるかたは行ってみてくださいまし。

きれいなまち。
プラハ城と同じく、リアリティを感じない。
……そのらへんにある建物でさえ、500年くらい歴史あるんだよ、とか言われても、ピンと来ない。

学生のころ、何かの授業で習った一般論を思い出した。
「欧米の文化は降り積もって行くものだけど、アジアは流れていくんです」
私がいま住んでるアパートなんかも、100年後には、取り壊されて、別のものになっているだろう。もちろん、私も、死んじゃってこの世にいない。
東京、いや日本の多くの場所が、どんどん変わっているだろう。
でも、この街は、人は死んで入れ替わっても、風景はこのまんまなのかもしれない。


この日のブランチも、やっぱりビール、そしてやっぱり郷土料理のブロッコリーの揚げ物と、店名物のオムレツをオーダー。
甘いもの大好き梶原さんが「オボツネー・クネドリーキ」を頼んだら、エロ新聞で小道具に使ってたやつと同じものが出て来てビビりました……。「これ、たぶん冷凍食品だから、まったく同じものかもしれませんよ!」と笑いながら、たいらげていましたが。

酔っぱらった勢いで、街の真ん中にある、川のそばの公園に行く。
すると、突然、梶原さんとニシさんが、遊具(ヒモで出来たジャングルジム)に登り始めた。

な、何やってんの!? と思った。
どうも、たんに、旅テンションが上がって、楽しくなってやってしまったことらしい。
でも、私もアルコールが入っていたのに、登ることは出来なかった。
とりあえず写真を撮る。
そうだ、私は、いつもこういう時、登るほうじゃなく観察するほうだったな、子供の頃も、ずっとずっと、なんてことを思い出してたら…。

地元の子供どこからともなく、ワラワラやってきた。


ごよーんごよーんごよーん。ひもをゆらす!

いつのまにか、人数増えてるし

ジムから降りたあとは、「ババ」という、「鬼ごっこ(えんがちょ遊び?)」はじまった。

少年らは、身長が160くらいあって高かったんだけれども、いかにも表情が幼くて、小学生くらいなんだろなあ、と想像出来た。

鬼ごっこの時も、私は参加せず、半笑いでデジカメを撮っていた。
突っ立っていた私にも、少年は数度、タッチしてニコっと笑った。鬼ごっこに加われ、という誘いのようだった。けれど、私はそれも、半笑いで誤摩化した。
あとで少しだけ後悔した。

別れ際、ひとりの少年が、ボタンを押すと「ゲロゲロゲローン」と鳴くオモチャを見せてくれて、「クレイジーフロッグ!」と大声で自慢していた。
「団地ともお」みたいだなあ、小学生男子は世界規模でアホなんだろなあ、同世代の女子にはバカにされてんだろなあ、なんて思った。
「世界遺産ともお」、と心の中で、そっと呼んでみた。

そのあと、私たちは、ビールと鬼ごっこでボケた頭で、草原のような、農地のような、観光客があまり来ないゾーンまで、散歩をした。


「自分の責任で渡ってください」と書いてあった小橋を渡る。海外生命保険はいってないのに渡っちゃった…。マネしないでください。

広い草地。遠くに団地が見えた。きっと、この街で観光の仕事をする人たちが住んでいるのだろう。ちなみに団地も虹色ぎみで、お城の色彩センスと、かなり似ていた気がした。

「ここ、寝っころがりたいなあ。寝てもいい?」ニシさんが言う。
「ああ、犬のふんとか無ければ、大丈夫ですよ」と梶原さん。
「排泄物って、チェコ語で、何ていうんですか?」
「ホ**!」
「ホ**か!」
それから、ふたりは、散歩の間中、数時間「ホ**、ホ**」と言っていた。
「日本の子供も、最初に好きになる言葉がウ**だったりするけど……なるほどな」と、妙に関心しつつ、「そんなにホ**が好きなら、ホ**というユニットを、二人で結成してくれ」と、私はわけわからん注文をしていた。
カルチャー雑誌編集部在籍経験を生かして、即席プロフィールを作って、インタビューをこころみる。


ホ**の中心メンバーのふたり。バックは全員、屈強な男性らしい。一昨年はマドンナのフロントアクトをつとめ、本年度にはメジャーデビューアルバムを初リリース。全世界の音楽ファンの注目を集めている、って嘘ですよ。

「今の音楽シーンにはホ**が足りないわ」
「そう、もっとホ**が必要よ」
「ホ**が分かってないアーティストばっかりで、うんざりだわ」
---マドンナは貴方たちに関して、何とコメントしたんですか。
「茶色いわね、イカしてるわ、って言われたわ」
---日本のファンに一言お願いします。
「ホ**、それが世界を動かしている、それなしでは誰も生きられないのよ」

旅のアホアホテンションは、マックスに到達していた。
もちろん夜もふたたび、ビールを飲んだ。
翌日はプラハに戻る。旅の終わりはもうすぐだった。(つづく)

取材協力:チェコ総合情報誌「CUKR[ツックル]」

完売してしまった1&2号を再構成、加筆した『別冊CUKR[ツックル]チェコってやっぱりアニメーション?』が発売中です。大塚も寄稿してます、宜しく


 
 
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