硬いつまみで壁づくり
着脱自在な屋根を取り外し、壁にしようと狙いを定めて買ってきたビーフジャーキーを並べてみた。
これまで「白川郷もかくや」と思わせる和風建築だった家に、急にレンガが積まれたような違和感を覚えたが、これは誰が何と言おうと壁だ。壁なのだ。
次の壁には、また和の素材を使ってみよう。こちらも抜群の強度を誇る自慢の逸品、するめだ。
足と頭の部分を取り除いて柱の高さと揃えてから、所定の場所に立て掛ける。
次の壁では、思い切って面積の大きくない建材にチャレンジしてみたい。これまでのように「置いたら終わり」で済まないだけに、より計画性が求められる難しい作業になることだろう。
用意したのは「やわらかイカ天」だ。果たしてこれは壁になってくれるだろうか。
非常に安定感がなく、ちょっと目を離したすきに倒れたりもするが、なんとか並べ終えることが出来た。
なんとなく「三匹のこぶた」でいうところの「藁で家を建て、真っ先にオオカミに食べられる愚かな兄弟」を連想してしまったが、これとて立派な壁だ。それに日本にオオカミはもういない。安心してほしい。
さて、ビーフジャーキー、するめ、イカ天の三つで、家はここまで出来上がった。
残すは一面のみ。ここにはドアも必要だろう。さて、何を使うべきか…と買ってきたつまみ達を眺める。もう壁向きのつまみは出尽くした。困った。
そこで、多少不安ではあったが、太い「チーたら」を使ってみることにした。
マヨネーズだけでチーたらは重なってくれなかったので、爪楊枝で無理やり繋げたりした。なんとか立つものの、ちょっと目を離すとバッタリと倒れるチーたら。こんな壁があるか。こんな分かり易い欠陥住宅があるか。
すでに、向かい側のイカ天も危ない。頻繁にグニャッと倒れる板が出てきた。完成を急がなければ。
ドアには海苔を使った。こんなに軽いペラペラがドアなんて…とは思うが、素材を吟味している時間はない。
さあ、壁が崩壊する前に、写真に撮っておこう。
あちこちのアングルから、記念と称して写真を撮っていて「おや?」と思った。真上から撮った一枚に、こんなものがあったのだ。
力士は廃業したらしく、将棋盤を間に挟んで対局の真っ最中のようであった。すでに隠居の身なのだろうか。羨ましいご身分である。茶室のような狭さが妙に落ち着くようで、なかなか居心地が良さそうだ。
…すみません、また遊んでしまいました。なんせこの企画、使えない素材(するめの足とか曲がったイカ天とか空豆とか)を食べ、ビールを飲みながら進めている。
しばし脱線するのは、もう諦めてもらうより他に仕方がない。
屋根を乗せた途端、微妙なバランスが崩れてしまったのか、イカ天の壁が崩壊した。
それを合図にしたように、今度はチーたらが、ビーフジャーキーが、次々と倒れる。どこかを直せば、どこかが倒れる。ついでに屋根が落ちる。
…もういい。もうウンザリだ。こんな家、食べてやる。
土台づくりが大事のようです
ちくわ柱が最後までビクともしなかったことからも分かるように、やはり家づくりにおいて、大事なのは土台づくりらしい。
つまみはお菓子に比べて値段が張る。材料をふんだんに使って強靱な家を作りたくても、懐がそれを許さない場合もあるだろう。
となれば割り箸なり大根なり、骨組みの時点である程度の基礎を築いておくのが肝要と思われる。
以上、つまみで家を作る際の参考になさっていただければ幸いです。