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ロマンの木曜日
 
蔵番ばばあが守る、遊郭の宿のはなし
 


前回の記事「珍・お伊勢参り(前編)」では、お伊勢参りのシーンがいっさいでてこなかった。

元祖国際秘宝館の終焉にときめいた心情をお伝えするだけでせいいっぱい。心底ご紹介したい画像はすべて、健全な青少年に悪影響のある恐れが……ギリギリの線だった。

秘宝館のあとさっそうと向かったのは旧遊郭。
何をみても性描写化してしまう、妄想だらけの脳内のまま、時を超え、いよいよ天照大御神(あまてらすおおみのかみ)さまとの遭遇を果たしました。果たしません。

(text by 土屋 遊



秘宝館をあとにして私たちが向かったのは、伊勢古市にある旅籠屋「麻吉旅館」です。

古市は、遊郭など約70軒・遊女1000人を誇り、日本三大遊郭として知られていました。お伊勢参りの帰り道、旅人の「精進落とし」と称して毎夜の宴でにぎわっていた場所です。

 

まぼろし異空間へ

かつての歓楽街にその面影はありませんが、今夜の私たちの宿「麻吉」だけが、唯一現在でも残っている貴重な建物になっています。

静かな住宅地の中に、ぽっかりと浮かんだ提灯の灯りと木造建築は、場ちがい的な空気さえ漂わせていました。

映画のセットのような異空間は幻のようで、あでやかな遊女たちが連なって行き交っている幻覚を見ました。

「麻吉にお供しよかいな」(東海道中膝栗毛より)

全国のお伊勢参りブームを作った弥次さん喜多さん(1808刊の書物・東海道中膝栗毛)の会話にもでてくる「麻吉」、そして「古市街並図」(1782)にも名を連ねていることから、実際にはそれ以上前からあったのでは……と、ご主人にもはっきりとわからないのですから私にわかるはずもありません。

 

有形文化財で迷走する

斜面に建てられた懸崖造りの木造建築は6層階です。国登録有形文化財に指定されています。京都の清水寺と同じ造りですが、ついに全貌を知る(見る)ことはできませんでした。

伊勢の街を、我がふるさとのように、悠々と案内していた神田ぱんと山口さんでさえ迷う複雑きわまりない構造。忍者屋敷のようで、軽く迷うたびにテンションがあがる異常事態に陥りました。

今の消防法や建築法からしても、一度壊れたら再現するのはむずかしいでしょう。つい先日、三重地震の速報を知った時は、とても他人事とは思えませんでした。


日本の遺産を守ってください
入り組んだ麻吉の屋根

これもぜんぶ麻吉旅館です

 

油屋騒動

映画「千と千尋の神隠し」に出てくる「油屋」を彷彿とさせるという意見も聞かれる建築ですが、宿までのタクシーで、運転手さんが「油屋騒動」という刃傷事件を教えてくれました。

三大妓楼のひとつ「油屋」で起きた色恋沙汰。金持ちのボンボンが、嫉妬に狂って遊女お紺(当時16才)をバッサリ切ったのが……「ここここっ!ちょうどこの辺!」(運転手さん談)なんの情緒もない十字路を指されても……。

のちにその事件の正しいあらましを知りましたが、ボンボン医師の狂気の沙汰からなんとか逃れたお紺さんは、一挙有名人に。そんなヒロインをひとめ見ようと「油屋」には全国から人が集まったそうです。「ここここ!」とはいったい……。


 

 
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