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はっけんの水曜日
 
おしえて、おじいさん
一番左が母方の祖父、らしい。たぶん。


 僕には生きている祖父の記憶がまったく無い。父方の祖父は兄が生まれる少し前に亡くなってしまった。祖父は戦争に行ってシベリアに抑留され、強制労働をさせられたが生きて帰ってきた。帰ってきてからは酒に溺れ、肝臓を壊して亡くなったという。

 母方の祖父についてはほとんど知らない。僕が生まれる随分前に亡くなったと聞いている。丸の内のビジネスマンだったとか、捕まえてきたナマズを家族に振る舞って嫌がられ、キレたとか、そういう断片的な事しか知らない。

 おじいさんって、どういう生き方をしてきたのだろう。おじいさんたちが生きてきたのはどういう世の中だったんだろう。今を、昔を、どう思っているのだろう。

だから、おじいさん達の話を聞くために上野公園に行った。

(text by 松本 圭司

■断られまくるの巻

 白状するが取材の方法がよくわからない。取材なんてしたこと無い。グーグル先生で調べても取材のノウハウなんて判らない。だから、無い知恵を絞って企画書を書いた。企画書片手に上野公園でおじいさんに話を聞いてみることにした。


なんとなく上野公園なら話を聞ける気がした。

「こんにちは!ライターの松本と申します!今までの人生についてお話を聞かせていただいてよろしいでしょうか?」

「断る。」

「あ、ありがとうございました!!」

 最初から断られた。ガーン。しかもキッパリと断られた。断られるのは覚悟の上だったが見事に断られた。企画書なんて見せる間も無かった。正直凹んだが、こんな事くらいで凹んでいたら取材なんて出来ない。林さんだって3年前に頑張っていたじゃないか。めげそうになるが頑張ることにした。

「こんにちは!ライターの松本と申します!お話(以下同文」
「いや、ダメ。」
「すみませんでした。」


「こんにちは!ライターの(以下同文」
「いまそういう状態じゃない。」
「申し訳ありませんでした。」


「こんにちは!ラ(以下同文」
「・・・(無言)」 手を振って追い払われ
「ありがとうございました。」


休日の上野公園は散歩をする人がたくさんいる。

 

■ここまで全敗。泣きそうだ

・・・・ダメだ。

 10人ほどに声を掛けて勝率0%だ。このままじゃ記事ならない。いきなりこういう取材は荷が重かったのか?いや、でもみんなきっともっと辛い取材を続けて続けて記事を書いてるんだ。ここで諦めちゃならない。まだまだだ、まだまだ終わらんよー!!

「こんにちは!ライターの松本と申します!今、人生の先輩に人生についてお話を伺っています。長い人生、きっと凄いネタをお持ちと思います。そういう話を記事として紹介出来たらと思っています!」

「そうだね、ドラマっぽい話もあるだろうね。でも世に出したいとは思わない。」

「え、あ、そ、そうですね。でもとりあえず聞かせていただく事は可能でしょうか?」

「話すほどの事じゃないな。じゃあ。」


 この後も無言で追っ払われたり、無視されたりが続いた。つれぇ。辞めちゃおうかな、と思った。どうにもおじいさんたちはガードが堅い。

 きっと僕の聞き方も悪いのだろう。記事にしたいという野次馬根性を見透かされているのかもしれない。自分のあらゆる欠点までもが見透かされているようで、泣きそうになった。そして申し訳無い気分になってきた。声を掛けた全ての人に。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

そんなとき、パンダまんの看板が見えた。


僕がもしパンダだったら話をしてくれるだろうか?

・・・・パンダメイクとかしてみるか?

なんか変なことをして心のガードを下げる試みを記事にしようかな・・・。


・・・。


・・・・。


・・・・・。


いや、ダメだ。ちゃんと取材しなきゃダメだ。


もう少し頑張ることにした。


 

 
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