いざ、内宮へ
私たちよりもコンパクトな旅の日程を組んでいる人の中には、外宮には行かず内宮だけで済ませる場合もあるという。
それもなんとなく分かるほど、内宮はまた違う迫力でこちらに訴えてくるものがあった。なんたって、まず入り口がドラマチックなのだ。
外宮に比べて人もグッと多く、どことなく華やかだ。そして非常に開放的でもある。
まさに、一生に一度のつもりで歩いた。再びここを訪れる機会はないかもしれない。江戸の人と違って来ようと思えばいつでも来られるのだが、現代人は他に行くべき所も多いのだ。心残りのないよう、きっちりとお参りする。
いつもは気恥ずかしくて、うやむやにしがちな「二拝二拍手一拝」という作法も、ここでなら堂々と出来るから不思議だ。
Aさんとは、ほぼアイコンタクトで意志の疎通を交わす状態になっていた。お互い、腹が減ると不機嫌になる性格であるが、神聖な場所で揉めるわけにはいかない。
(もういい? 行くよ?) (うん。行こう)
内宮を回り終え、いよいよ後は帰るばかりである。
空腹の限界を越えて身も心も清められ、煩悩など捨ててスッキリした人間になったかとも思ったがそうはいかない。旅の本当の目的は、これから始まるのだ。
だってもう、いきなりコレですもん。
テレビで肉を食べた人が「柔らか〜い!」と言っているのを聞くたびに「ケッ、柔らかいのは分かってるんじゃ。もっと他に表現方法はないのか!」と腹を立てていた私であるが、すみません。言わせてください。
「柔らかい!」そして「おいしい!」
これがもう、ビックリするほどおいしかった。
めくるめくウマイもの
伊勢は、肉もウマいが海産物もウマい。あちこちで練り物が積み上げられたり蒸されたりしている。これが素通り出来ようか。
ところで、この門前町は「おはらい町」という。「神宮に参る人々がお祓いを受けて宿願を果たした」ことから、こういう名前が付いたのだそうだ。
やはりこのウマさは、お祓いを受けた後だからこそ、な部分もあるのかもしれない。
さらにさらに、魚介の部は続きます。
ひものがズラリ
ひもの屋が、えらいサービスをしていた。試食のために大量の干物を焼きまくっていたのだ。もちろん私も一匹いただいた。大変おいしかったが、果たして店の儲けは出ているのだろうか。心配してしまうほど気前がいい。
「ここらで、ちょっとサッパリしたものが食べたいな」と思ったらコレがある。
きゅうりの漬け物100円
「そろそろ、また肉に戻ろうか」という気分になったら、伊勢肉専門店の店頭で売られているミンチカツを求める列へ並ぶ。もちろん和牛の店です。
町の中ほどにある「おかげ横丁」は、さながら江戸時代のテーマパークのようだった。
ここで、今まで見たことのない食べ物を発見。エビ天が丸ごと1本巻かれてます。インパクト大。
…ああ、なんて楽しいんだろう。この情報過多な、気忙しい現代に住む私がこれだけ楽しいのだ。江戸時代の人は、そりゃ家財道具を売っ払ってでも、伊勢参りに行きたかったことだろう。
お楽しみはまだまだ続きます。伊勢は、こんなもんじゃありません。