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ひらめきの月曜日
 
21世紀のお伊勢参り

どんどん食べよう

食べたい物は、まだまだある。Aさんと「これはどうだ」「いや、あっちのがウマそうだ」など、歩きながら話も弾む。あらかた腹が膨れているので、お互いすこぶる機嫌がいい。


伊勢湾産の焼き牡蠣は外せないだろう
もちろん、赤福もな!

協議の結果「ここいらで、腰を落ち着けて腹に溜まるものを食べよう」ということになった。

さっそく、伊勢名物「手こね寿司」の店に入る。


容器の桶が大きくて少々ビビリましたが、
だいぶ底が上がっておりました。

普段なら「上げ底だ!」と怒る場面だが、もうある程度、腹の下地は出来ていたので安堵の気持ちの方が強い。

乗っているのはマグロではなくカツオだ。これがカツオ好きにはたまらないシロモノだった。ヅケになっており、非常においしい。大葉が混ぜ込まれた御飯もサッパリしていて、すんなりと喉を通っていく。

「おいしかったねぇ」と言いながら、腹ごなしの意味も込めて町をブラブラと歩いた。


この町の郵便局は、こんなでした
目安箱ではありません。ポストです
銀行も「両替商か」と思うような店構え
ATM=現金自動取扱所。小判は出てきません

ただの町歩きが、たまらなく楽しい。こういうところは「江戸の人とは違う楽しみ方だな」と思うが、楽しいんだもの、仕方がない。

さらに、煙草飲みな私にうってつけの物を見つけた。


おお、一服するする
お店の人に、火種をつけてもらいます
…ああ、旅っていいねぇ。江戸に帰りたくないやねぇ
吸い終わったらコンコンと中身を叩き出しておしまい

満足だ。すっかり満足した。腹も心も十分に満ち足りた。なんちゃって江戸時代ごっこは、非常に楽しかった。

帰りの新幹線は、最終(午後10時2分)を予約してある。現在の時刻は午後4時だ。まだまだ時間はたっぷりあるぞ。さて、どうする。後はどこへ行くべきか。

「せっかくだから、海に行こうか」「そうだ、夫婦岩を見よう」ということで、二見に行くことに決定。例の一日乗り放題チケットを手に、バスに乗り込んだ。


カエル越しに、夫婦岩
天の岩戸って、ここにあったのか
とにかくカエルだらけです
ふりむけば、カエル

「なんでこんなにカエルが?」と思ったら、カエルは天照大神の使いとされているのですね。いや、不勉強ですみません。なるほど、大事にされているのが分かります。

天照大神の祀られた内宮を参拝した後に、カエルで締める。うん。流れとしては完璧じゃないでしょうか。これぞ伊勢参り。どうだ。(誰に威張ってるのか)

 

まだ締めるには早かった

例のバスで外宮前まで戻ってきた。もうとっぷり日も暮れている。さてさて、Aさんの持って来てくれたガイドブックによると、駅の近くに伊勢の新たな名物があるという。これは寄らない手はない。


三ツ橋ぱんじゅう。パン+饅頭の意味でしょうか。
あんこ、カスタード、紅イモをセレクト
普通の饅頭より皮?がフカフカです

さらに、大事な物を食べ忘れていた。伊勢うどんだ。

ふやけ麺好きを公言してはばからない私だが「いくらあなたでも、さすがにアレはどうかと思うに違いない」と周囲に言われ続けてきた伊勢うどん。一体、どんなうどんなんだ。

とにかく「あれはおいしいね」と言い切る人を見たことがない。ものすごく気になる食べ物、伊勢うどん。

伊勢まで来ておきながら、これを食べずに帰ることは出来ないだろう。


太い。とにかく太い。
そして、限界まで柔らかい

麺が太いので、まとめて何本も啜ることが出来ない。いや、1本でさえも啜ることはほぼ不可能だ。というのも、啜る前に麺が切れてしまう。…なんだ、これは。

汁も(いや、これは汁と呼べるのか)そのまんま醤油か?と思えるほど、とにかくやたらと味が濃い。熱い麺と冷たい汁。ぶよぶよの麺は「ウェルカム」といわんばかりに汁をどんどん吸い込んでいく。だから濃いってば。

…いや、あの、わたし、これ、汁をもっと薄く伸ばしてくれたら、きっと好きです。そんな気がします。

それにしても、どういう経緯で作られたんだろうか。非常に気になる。食べてなお気になる存在、伊勢うどん。恐るべし。

さあ、もういよいよ食べ残した物もないハズだ。


すっかり夜です
伊勢滞在時間、約9時間
名古屋の居酒屋で軽く一杯飲んだあと、最終の新幹線に乗
りまして、
品川に着いたのは、こんな時間でした。

帰りの新幹線で、ビールをたらふく飲みながら反省会をした。いや、反省すべきところなどない。ただただ、旅の思い出を語らった。そして、笑ってばかりいた。

「伊勢、おもしろいねぇ」
「うん、おもしろかったねぇ」
「また行きたいわ」
「ね。次は伊勢牛のすき焼きを食べようよ」

新横浜でAさんは降りていき、私は品川で降りて、日帰りのお伊勢参りは終わった。

これは人気が出たのがわかります

江戸時代の人は、旅の目的を「お参り」としつつも、本来の楽しみは神社仏閣を拝んだ後の「精進落とし」だったといわれているが、これは今でも変わらないんじゃないかと思った。変わったのは、時間の感覚だけかもしれない。

参拝中は「一生に一度かも」などと思った私だが、今となっては「これはもしかしたら二度、三度とあるのでは…」と思うまでになった。そういやAさんも二度目だ。

だって、さんざっぱら食べ歩く旅であっても「お伊勢さんに行って来たんだよ」というだけで、なにやらありがたみが出るじゃありませんか。それに、一日で消費しきれるほど伊勢は底が浅くないのです。

うん。やっぱりまた行こう。次は泊まりで。

当たり前ですが、さすがに日帰りは疲れました。

人っこ一人いない新幹線ホームは非常に寂しい

 
 
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