はいらないんじゃない、はいれないんだ
そうしてテントの写真も撮り終わった、さあテントに入ろうと鼻息を荒くしていくと、さっきからテントを取り巻いている人だかりはまだ消えていない。仕方がないので人の波を書き分けて入場口へと近づいていった。
おや?
入り口のドアは閉ざされ、中から大柄の警備員の方がにらみをきかせていた。ドアの隙間から滑り込もうとした男の子が文字通り(本当に文字通りだった)つまみ出されている。
なんと、あまりにも人々が押しかけすぎたせいで大テントはどこも入場制限を行っていたのだ! テントを囲むひとだかりは、中に入れずうろたえる人々だった。えー!
中をのぞくと、席を確保できた人々がビールジョッキ片手にイスの上に立ってグネグネ踊ったり、肩を組んでゆっさゆっさ揺れたりしている。そしてとにかくざわめきが大きい。ちょっと怖い。いや、かなり怖い。
さっきから感じていた地響きもここから聞こえていた。バンドの音にあわせてみんなしてイスの上で踊っている、その反動だった。
しばらく待っても扉は開く様子がない。隣で待っているドイツ人らしきおじさんが警備員に大声で何か聞くと、なかの警備員が静かに首を振っているのが見える。
明らかに入れなさそうな雰囲気。
私は日本からドイツまで飛行機で11時間かけてやってきたのだ。しかもこの祭り中のミュンヘン市内のホテルは通常の3倍以上の値段する。勇気を振り絞らねば!
「ワタシ、ニホンカラキマーシータ! イレテクーダサーイ」
普段外国人の方には全く閉じた態度の自分だが、ここぞとばかりインチキ英語で叫んでみた。それも、あたりの騒音にむなしくかき消された。
さらに、もし入れたとしてもあの狂乱のなかで果たして私はちゃんとビールを注文することができるだろうか。考えるとそれもどうもノーなのである。ぶるぶるぶるぶる。
到着が19時ごろだったので、さすがに時間が悪いのかもしれない。ととりあえずは移動遊園地で遊ぶことにしてその場を離れた。が、その後もまるで大テントに入れるきざしはない。
さあ、ドウスル! |