デイリーポータルZ新人賞 結果発表!
ご応募ありがとうございました。
新入社員だったころ、先輩社員に仕事のやりかたを聞いたら「教えない」と言われました。なぜか聞くと「抜かれるから」と言ってました。なんて正直な人!
でもいま僕はその先輩の気持ちがわかります。抜かれる!応募作品がみんなうまい。そして世の中を面白がっている。昨今、けっこう面白がりにくい状況が続いていますが、この面白がりの才能あふれる人がこんなにたくさんいるというのはなによりの希望です。
いっしょにおもしろがっていきましょう。教えないけど!
全部門をとおして、もっともすばらしかった作品です。
【編集部コメント】
- 身近なところに規則性を見つけてます。まさにおもしろがり。びっくりドンキーの店員にとってはおもしろいことではないのかもしれないけど、発見は距離じゃないことを見せつけられました。 (林)
- この記事、本文ももちろん最高ですが、何がいいって目次がいいんですよ。「強烈な給水体験」「水が出ていない=有事」「気づいている顧客たちも」。どれも力のあるフレーズで、読む前からグイグイ引き込まれました。 (石川)
- 読んでいて2回吹き出しました。「吹いたw」って書き言葉でよくありますが、実際吹くってそんなにないと思うんですよね。でも吹いたんですよ。びっくりドンキーに行ったことほとんどないのですがそんなこと関係なく最高に面白かったです。最初から最後まで捨て文なしの名作でした。(古賀)
- びっくりドンキーには何度も行ったことがあるはずなのに、これに気づかなかったのがくやしい!と思うくらいおもしろい発見でした。何でもないことからおもしろさを見出して、それをおもしろいまま人に伝えられるのは能力だと思います。 (安藤)
- 「そんなわけないだろ」と思いつつ読みすすめると……、意識が180度変わるような体験をしました。自分では気づかなかったおもしろがり方です。こんどびっくりドンキーに行ったら水に注目してしまうでしょう。(藤原)
- タイトルを読んで、まさかと思いました。びっくりドンキーのメインはあの外観や内装だと思い込んでいたので、驚いた次第です。ハンバーグメインの店で「イカの方舟」を注文するところも最高。みんなが知ってる店で多くの人が気づいていないポイントに気付けたところが良かったです。 (橋田)
【編集部コメント】
- 散々見たのに気づいてませんでした。見た目のおもしろさにとどまらずに、きちんと調べてまた見ておもしろがる。知識があるとまた一層おもしろい。頭と身体を交互に使う楽しさが詰まってます。 (林)
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一回バーッて紹介して、その後くわしく調べてからまた戻ってくるところがすごく良いんですよね。こういう知識って、知ると世の中の見方が変わるところが良さ。でも記事だと知識を紹介して、そのあとは読者にゆだねられることが多い。Before~Afterまで記事内に収録しているのは斬新です。 (石川)
- 「のたうち回り」という表現が発明でした。なるほどソメイヨシノはのたうち回ってる。“言われてみれば確かに”の強さが鮮明な記事でした。 知識をつけてからの高解像度な2周目があるのが新しいし楽しかったです。 (古賀)
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そういえばそうだな、という事柄にのたうち回り具合、という聞いたことのない表現を当てた感性にやられました。近所にはまだまだおどろきが潜んでいるな、と思い知らされます。 (安藤)
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ソメイヨシノは複雑な形をしているなとは思っていたのですが、そうか「のたうち回っ」ているのかという思いです。そう表現すると静止している木もダイナミックに、楽しく見えますね。 (藤原)
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桜の木はそこらじゅうにあるのに"のたうち回り具合"を愛でたことはありませんでした。のたうち回り具合を先に見せて、あとから説明している構成も良かったです。すべての写真がきれいだったのも良かったし、最後にキレイな桜が咲いている写真が見られたのが最高でした。 (橋田)
各部門の中で、もっともすばらしかった作品です。
【編集部コメント】
- 王道の路上観察記事。車はただ停まっているだけなんですが、分類と「補助なしのストロングスタイル」などの形容詞でこの面白さを翻訳できています。写真をきちんと正面、横から撮っていることも大事です。 (林)
- これは表現力の記事ですね。観察対象も興味深いですが、それを描写する表現力がずば抜けていました。僕のお気に入りフレーズは「車が先か車庫が先か」です。(石川)
- ギリギリ駐車という街でごくまれに見かけるもの、その本場が実は京都だった! というような、既視感のあるものが特定の場所でまとまって見られることに興奮がありました。いままで単なる致し方なさとしてとらえていたギリギリ駐車を文化のように感じました。 (古賀)
- 写真とキャプションをさらっと読み流しただけで笑ってしまう強さがありました。もちろん本文もテンポよく面白いのでじっくり読んでも得した気分になります。自分がアイドルだったらこういう写真家に撮ってもらいたい。 (安藤)
- ギリギリさにも目を引かれますが単に羅列するだけではなく、見どころをきちんと言葉で表現してあって良かったです。それぞれ個性が輝いて見えました。(藤原)
- 書き出しで京都の名物に“駐車技術の高さ”を入れてしまおうという唐突さに笑いました。導入、説明のあとは分類分けされていたのが読みやすかったです。(橋田)
【編集部コメント】
- 専門的な話題も入ってきますが読みやすく、また話している二人が楽しそう(に見えるように書けている)のが印象的でした。専門家インタビューで陥りがちな硬さが全くないんですよね。 (石川)
- 見せ方の工夫がすごくフレンドリーでプロでした。冒頭からとにかく入っていきやすかったです。本来狭い世界の話ですが、現実とキリっと結び付けてあって興味を限定していないのも多くの人を興奮させた力だと思います。 (古賀)
- この記事を読んで「あつ森」やらなきゃいけないな、と思いました。ゲームにまったく興味のない人種にそう思わせたすごい記事。 (安藤)
- 見えてる部分から見えない部分を想像しているのがおもしろかったです。インタビューを読みやすく仕上げてる感じがあって好感が持てました。 (藤原)
- 「あつ森」やってないのでわかるか不安でしたが、楽しめました。古賀も書いていましたが、フレンドリーっぽさが良かったです。私も「グレーチング」好きになってきました。後日、指摘があった投稿にも対応し丁寧だと感心しました。(橋田)
【編集部コメント】
- サラッと描いているけどもとの画力の高さを感じる作風。なにもドラマチックなことは起きてません。でも、旅行って妙に後から思い出す不思議なできごとがありますよね。それが描かれています。(林)
- 話のオチ自体はすごく個人的なことであまり共感のあるものではないのですが、嫌みのない語り口や性格の良いイラストで全体が明るいです。読むといい気分になる記事でした。 (古賀)
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さらっと描かれた旅日記に見えて実はちゃんと流れがあって情報も豊富です。無理にテンションを上げさようとしない上品なおしゃれ。 (安藤)
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行くと決めたものの心配や後悔がおそってきたときのイラストが好きです。ミニマムなイラストでテンポよく話がすすんでいくのが良かったです。 (橋田)
動画部門
部門を問わず、特に良かった作品です。
【編集部コメント】
- 僕の大好きな作品です。これだけ面白いオチのあるエピソードであれば、書き方の正解は「素材を生かす」の一択だと思いますが、テンションの推移や心象描写が良く書けていてスッと入り込み、物語を堪能できました。適度に軽口が入っているのもよいです。(石川)
- 書きなれていてよどみない文章と共感性の高いテーマに前のめりになりました。事件の全体としてはオチのある鉄板エピソードで、はられた伏線など上手な進行が憎いです。読ませる理由はそれだけではなくて、続々と光る表現が入っているんですよね。「色合いが最もベーコンに近い写真」とか「いきなりご飯派になっていないだろうか?」とか読んで満たされる記事です。 (古賀)
- 「カリカリベーコン3本の矢」の厳密な定義づけからの…オチ、が素晴らしかったです。シンプルなエピソードではあるのですがワクワクしながら読ませられました。(藤原)
- わざわざユタまで行ったのに“人生で忘れられない味”の正体がわかってしまいましたね。段落や改行のとりかたが上手で読みやすかったです。(橋田)
【編集部コメント】
- とにかく注目すべくは仕事の丁寧さでしょう。ひとつひとつ紙テープで再現していく手仕事。わかりやすいと同時に「ラベルの立体化」という今まで見たことのない絵を見せてくれました。3次元だしちょっと細かい話だしで言葉だけで表現するとかなりわかりにくい記事になったと思うのですが、ビジュアルの力が素晴らしかったです。(石川)
- 見たことがある、でも見たことがない。そういうものがあって、たとえば唐草模様の風呂敷を背負う泥棒とか虫眼鏡で推理する探偵みたいなステレオタイプがその筆頭だと思うんですが、デザインにもそれがあるのか! と、やられたのひとことです。具現化ネタにネクストステージの扉が開かれましたね。 実装も手堅く、それに照り焼きの代わりに最近ハマっている「じわ揚」を採用するなど上手い抜け感がありました。(古賀)
【編集部コメント】
- これ、こうやって見せられるとスゲーおもしれーと思うんだけど、こんなの見たことないじゃないですか。それをこの数集めてくるのがまずすごいなと思います。数集めると単体で面白いものももっと面白くなるんですよね。そこを足腰の力で実現してるのがすごい。 (石川)
- "信号の「ロング押ボタン」を集めましたって、何を言ってるんだろう? と思うじゃないですか。それで冒頭の写真を見ると、おお、ロング押ボタンじゃねえかよと納得するしかない、その気持ちよさがたまらなかったです。 惜しげもなく次々見せていくテンポの良さがあるので、変わったタイプのものが出た時のシンプルな可笑しみが際立っていたと思います。" (古賀)
【編集部コメント】
- "おもしろ記事にあるまじき写真のきれいさ(いいことです)。 やっていることはかなりトリッキーだと思うのですが、奇をてらっているところがなくまっすぐ好奇心とおいしさを追求しているところが好印象でした。"(石川)
- 思いついちゃったことに楽しそうに立ち向かっていく姿勢が見ていて気持ちよかったです。写真もテキストも無駄がなく整っているので、1か所くらい「無駄」を差し込むともっと存在感を出せると思います。(安藤)
- 写真や動画(アニメgif)がとてもきれいなのが印象的でした。写真が多めで、テキスト部分も小見出しや太字の活用で全体的に読みやすかったせいか、俄然試したくなりました。(橋田)
【編集部コメント】
- 不思議な記事です。きちんと準備をしてしっかりと有識者をアサインしているのにもかかわらず行き当たりばったりというか生々しさがあります。企画記事を作っているとつい「こうなったらいいな」という落としどころを事前に考えたり「こう言ってくれたらいいな」と取材対象に期待したりしてしまうものだと思うのですが、そういう邪念が一切ない。もしかしてピュアなのかなと思わされました。(古賀)
- ネットで正解を調べるだけではなく、クイズのプロに解かせたことで記事が無機質にならずに、読み物としても面白くなっていました。解答を元にアンサーソングを作るとか、最後にもう一展開あるとさらに過剰なリスペクトが感じられたんじゃないでしょうか。(安藤)
惜しくも受賞は逃したものの、編集部内での評価の高かった作品です。