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特集


ひらめきの月曜日
 
うしろまえのひと

ようこそ、いらっしゃいました


洋服よりも如実に、人

うなじが見えるなど、多少の背中感は残っているものの、私には完全に私でない別の人格が見えております。どうでしょうか。

思うに、洋服のときよりもグッと分かりやすく人っぽい。着物を着ると体の凹凸があまり目立たなくなるからか、妙にリアルなのだ。

私も、合わせ鏡で後ろを見たとき誰が別の人がいるのかと思ったぐらいである。


背中度、ほぼゼロ

こっちは首を180度回して振り返っているよう

出かけるのは無理です

着物というと晴れ着といったり、おめでたいイメージだが、こうして着てしまうと洋服のときよりもずっと怖い。ストレートに妖怪といった感じだ。

本当は街に繰り出して写真撮影をする予定だったのだが、恐ろしい勢いで母に止められた。確かに、この様子がご近所に知れたらことだ。まだ中学生の弟がいじめられかねない。

一人、だけど二人

そういったわけで、渋々、それでも通行の方を重々意識しながら自宅前で遊んでみた。いろいろやっているうちに、お辞儀の動作が面白いことに気づいた。

後ろ前の人にお辞儀をさせるためには、私は体を反らせればいいわけだが、ググっと反らすとだんだん私の顔が向こうに見えてくるのだ。


後ろ前の人、おじぎ

普段は前の人も出てきて、こんにちわ

一人の人に、二人の人。なんかお座敷芸にありそうなかんじです。動画で撮ってみましたのでどうぞご覧ください。

後ろ前の人
暮れのごあいさつ
> QuickTime <

さらに、ご挨拶つながりでコートを着てお歳暮を抱えてみるなど着物ならではの動きもやってみた。

後ろ前の人、お歳暮をかかえて

着物だと動作も限られてくる。少ない動作の中で撮影してくれた母が一番おもしろがったのは、わざわざ何かをやるより私が普通に歩く動作だった。

私が前に歩く、ということは後ろ前の人にとっては「後ずさり」をしているということになる。

スタスタと普通に後ずさって行くのがたまらなく気持ち悪いと母は言っていた。

後ろ前の人
後ろ歩きをする
> QuickTime <

堪能しました

結局、賞味洋服で5時間、着物で2時間ほど後ろ前に着て生活してみた。お腹いっぱいである。のだが、ついぞこの服の着方に慣れるということがなかった。

いつまでたっても違和感がある。私じゃないだれかがすぐ後ろにいるというのも不安だ。

着物のほうは着付けに時間がかかった分脱ぐのがちょっともったいなかった。でも、もし着たまま寝ちゃって、後ろ前の人が私の代わりに起きて生活していたらと思うと……。ぎゃー! 怖いので、もう脱ぐことにします!


後ろ前の人 は、どんな人の背中にも必ず一人いる。

デイリーポータルのライター、小野法師丸さんは、かなりの高頻度で服を後ろ前に間違えて着ているらしい。個人でやってられる日記サイト(「テーマパーク4096」内の「コラム息切れ」)によく書いている。

最近だと12月2日の日記がそうだ。拝読すると、後ろ前に着て気づくのは着てから何時間かたったあとだという。その数時間、小野さんの背中には後ろ前の人がじっと息をひそめているのだ。

小野さん、大丈夫だろうか。いや、もしかすると、「ゲゲゲの鬼太郎」やなんかで、妖怪が子供と仲良くするように小野さんはすでに後ろ前の人と既に仲良くしているのかもしれない。

後ろ前に着ることが間違いであるという根本を忘れ、なにやらオカルトな気分にさせられた今回です。

今年の忘年会はこの格好で出ようか


 

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