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ひらめきの月曜日
 
うしろまえのひと

後ろ前に着付けてもらう

翌日いそいそと後ろ前に着物を着付けてもらうべく埼玉の実家へ。母は着物一式をそろえて待っていてくれた。

襦袢から何から全部後ろ前にきます!

この日後ろ前に着物を着せてもらう前に、偶然にも着物を着たのだが、それが6年ぶりの着物着用だった。1年に1度以下の着用率だというのに、今日はわざわざ後ろ前逆に着ようというのだ。大丈夫か、着物の神様に怒られやしないか。

ビビって衣紋掛けに掛けてあった着物を軽く拝んだ。今日はよろしくお願いします。なんだこれ、何かの儀式でも始めるみたいになってる。

後ろ前の着付けは美容院感覚

母にはただただ「後ろ前に着せてくれ」と頼んだ。もちろん母にとっても初めてのことだ。というか、今まで着物の歴史の中で着物を後ろ前に着たことがある人っているんだろうか。……。そうやって歴史ぐるみで考えると、案外結構いそうな気もしてくるから不思議なのだが。

「はい、袖とおして」

前掛けをかけるように着付け

言われるがままに前から袖を通す。この感じ何かに似ているなと思って考えてみたが、あ、分かった、美容院だ。髪の毛よけの前掛けをかけてもらうときの感じに似てます。


ここまではまだ普通か

意外にも母は戸惑うことなくサクサク着せていった。襦袢を着終わると、着物も前掛けみたいに袖を通す。

胸がない分、着付けも楽らしい

まったく着付けができない私は、着物を着せてもらうときは完全にマグロである。されるがままだ。着付けにはだいたい30分ぐらいかかったのだが、その間中、全貌がどうなっているのか私には見えない。

きものの中心線が目の下にきてる

母もテキパキきつけるばかりで何も言わなかった。どうなのよ、どうなのよ今の私の後ろ前っぷりは。

聞くと、母は「そーねー、後ろ前っていってもこうゆう服、あるっちゃあるみたいな感じするわねえ」などと言ってる。

いや、ないだろう、そんな服。


母的にはこうゆうデザインの服はアリらしい

徐々に後ろ前の人の片鱗が

意外に難しいぞ、後ろ前で帯

さあ、ここまできたら後は帯である。着物スタイルの肝、帯。今回は基本のお太鼓にしめてもらうことにした。

これまで何の問題もなく作業を続けてきた母だったが、ここで動きが止まった。何やら混乱している。

「え? こっちが顔だから、どっちが前?」

これまでは問題なく作業してきたのに、帯となってわからなくなってしまった模様。

「こっちこっち! こっちが背中!」


今日はお腹が背中です

ナビゲートしながらお腹の上で太鼓にしめてもらった。これが本当の腹つづみですな。いやはや。

そんなわけで、着終わりましたよ!

真横、こんな感じ

完了、そして母が叫んだ

どう、どうどう? できあがったところで母に引きで見てもらう「うーん、後ろ前でも着せようと思えば着せれるもんなのねえ」。着た姿に面白味は感じていないような母だ。意外と普通に見えるのだろうか。

が、自分で自分の姿を確認すべく、部屋を出て洗面台へ向かったときである。

「わあーーーーー!!」

母が叫んだ。結構大きな声で叫んだ。

「ちょっと! 変だよ! のっぺらぼうがすごい早さで後ろ歩きしてるみたい」

この「しばらくしてから突然怖がる」という反応、洋服のときの橋田さんとほとんど同じだ。母は、あとはもう、「怖い怖い」というばかりだった。

合わせ鏡で後ろ前の人の存在を確認

母はとにかく、私が前向きに普通に歩くのが怖いという。着物の正面がグングン後ずさって行くのが気持ち悪いらしい。

お待たせしております、それでは次ページで着物をきた後ろ前の人にご登場いただきましょう。

どうも、こんにちわー



 

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