歩き出すと、ヒザの部分がうまく曲がらず、ああ、ちゃんと体のことを考えて作られているんだなあと実感した。ジーパンはヒザの部分に中古加工で穴が開けてあるのだが、逆に着ると穴が丁度ヒザの裏にあたって、異様にスースーした。
全体像、どう?
着終わって、着心地の悪さにモゾモゾしながら撮影してくれたデイリーポータルZ編集部の橋田さんにどんな風に見えるか聞く。背中がどうなってるか見たいのだが私には全く見えない。
どんな面白いことになってるだろうとワクワクしていたが、橋田さんは申し訳なさそうに「うーーーん。別にただ単に、変な人が後ろ前に服着ちゃってる、ってだけの感じですかねえ……」とのことだった。うーむ。
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ただの変わった人? |
確かに撮ってもらった写真を確認すると、何ら面白い感じはない。違和感もない。
これでは酔っぱらいがネクタイをハチマキにする程度のお戯れで終わってしまう。あわわ。
じゃあ、お面でもつけてみっか
もっとこの後ろ前で面白く遊べないか、思いついたのはお面の導入だった。
後ろ頭にお面をかぶるのだ。後ろ前に着た服に合わせて、頭の部分にお面の顔がくるようにする。
幸いにも、以前自分の等身大パネルを作るという企画をやったとき作ったままの等倍サイズのパネルがある。ずっと捨てられずに自宅へ配送してまでとってあったのだが、顔の部分だけ切り抜いてお面にした。
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微妙な表情はそのままに、お面化 |
後ろ前の古賀、出現
先ほどの状況にお面を加えて再度撮影を試みる。
--橋田さん、どうですか?
「あ! あはははは。古賀さんだ。古賀さんがいますよ」
顔がつくことで、グッと背中っぽさがなくなったようだ。
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古賀ですけど、なにか? |
ときおりお面のプリントが蛍光灯に反射してしまうのだが、騙されようと思いながら見ると第二の古賀がそこに出現する。
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おなかいっぱーい、のポーズ |
さらにいろんなポーズを逆向きてやってみる。体を反らせれば、寝転んでいるように見える。
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なお、逆側はこのようにかなりキツい体勢 |
写真を撮っては「あ、見える見える! 人みたいに見える!」と大喜びだ。
よしよし、そしたらこのまま外に行って、もう少し遊んでみよう。街へ出て撮影を続けることにした。着替えるのは面倒なので、お面だけ外して移動しよう。
と、そのときである。
誰かいます!
「わ! ちょっとまって! なんか今、見えた! 誰か、誰か黒い人が見えました!」
ずっと落ち着いてで撮影を続けてくれていた橋田さんのテンションが急に上がったので驚いた。私の背中を見て盛んに「黒い人がいる、黒い人がいる」といっている。
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黒い人? |
私も、もう一度お面を取った状態の私の背中の写真をジッと見てみた。ジッと、ジッと見る。
「うわーーー! いた!」
瞬間、写真にうつる私の背中が、誰か知らない黒い顔の人のお腹になったのが分かった。真っ黒な顔の人がこっちを見ていた。怖い。これは怖い。
お面を着けることで背中をお腹としてとらえることに慣れてきたのだろうか。
「うしろまえのひと」が見えた瞬間だった。
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マウスオンでお面を取ります |
どうだろう。皆さんも後ろ前の人に出会うことができただろうか。
味をしめた私たち撮影班は、さらにこの状況をおもしろがるべく、街へと繰り出します。
まだ後ろ前の人が見えてこない方も大丈夫。慣れてくると突然現れるのが彼(彼女)なのです。さあ、後ろ前の人と出かけようぜ!
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