旨いコンニャクと乙女心
「……うまい」
店の方が専用らしい鍋からヌッと取り出し、これまた年期の入った壷からお玉で味噌をかけて渡してくれたコンニャクは、相当でかかった。8cm×14cmぐらい。普通にスーパーで売っているパックのコンニャクまるまる1枚に横から割った割り箸を突き刺したような男らしい1品。
これがやたらにウマいのだ。なんでだろう。私はコンニャク好きであるが、美味しいコンニャクと美味しくないコンニャクの差はそんなにない思っていた。ずば抜けて美味しいコンニャクなんて存在しないと思っていたのだ。
それがどうでしょうこの美味しさ。味噌も美味しいが、何しろコンニャク自体がすごい。プリプリというよりも、サクサク、コリコリしている。はっ! そうか、コンニャクの原料は芋なんだ。コンニャクを食べながら芋を感じたのは初めてだ。
1枚でお腹いっぱいになってしまったが、これなら3枚はイケそうだ。
なのに、である。なぜか取材当時の私は1枚で「ごちそうさまでしたー」とトレイを返却してしまったのである。
今となっては本当に不思議だ。どうやら、店内に客一人、お店の方も一人(帳簿つけ中)という雰囲気に押されてしまったらしい。自分にこんな乙女な一面があるとは。ああ、ただただ悔しい!
その穴を埋めるようにコンニャクグッズを買いまくり(コンニャクラーメン、コンニャク梅漬、桑こん茶、コンニャク手作りキット、粒こん、そして食べ放題にも使われているレギュラーコンニャク以上6品を買い込んだ)、コンニャク村を後にしたのだった。
帰りのバスの中でも、ずっとコンニャクのことを考えていた。
西武秩父駅でもうひとコンニャク
悔しい思いは西武秩父駅に戻るまでずっと続いた。と、電車を待つ時間、駅前のお土産屋さん街を歩いているときに気になるメニューが。
そばコンニャク 420円。なんだそれ。
コンニャクそばだったら、先ほどのコンニャク村でも見かけた。実は私は別ルートでコンニャクそばを食べたことがある。
コンニャク粉を巧みに使ってそばを再現したもので、コンニャクというよりもむしろそばという食感で美味しかった。
一方こちらのそばコンニャクは、秩父そばを扱う店にあった。コンニャク屋さんが作ったそばがコンニャクそばなら、そばコンニャクはそば屋が作ったコンニャク、ということか。ああ、もう何がなにやら。
とにかく、先ほどの無念をはらす意味も込め食べてみた。
店員の方の説明によると「さしみコンニャクみたいな感じです」という。あ、なるほど。そば状のコンニャクってことか。
ツルツルしていてツユもさっぱりしていて美味しかった。よくダイエット食品でコンニャク麺というのを見るが、断然こっちの方が美味しい。
秩父のコンニャクは相当ハイレベルだということが分かった今回。大変だけどわざわざ食べにいく価値本気でありです。コンニャクにこんな底力があるとは……。いや、本当、参りました。 |