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特集


ちしきの金曜日
 
自分の力で空を飛ぶ

さあ、飛び立とう

ついに彼らのフライトの順番が回ってきた。

先ほどから風が強くなってきているのが心配だ。上手く飛ぶことができるだろうか。


機体の出発するプラットフォームには必要最小限の人数しか登れない。それ以外のメンバーは、

このように放送席近くのモニタを見ながら応援する。

 

プラットフォーム上の大会係員が赤い旗を降ろす。いよいよテイクオフだ。

離陸直後。このときに、尾翼がプラットフォームにあたってバランスを崩してしまったり、主翼がたわみに耐え切れずに折れてしまうことがよくあるらしい。今回は問題なしだ。

離陸後も、出発時の高度をほぼ保ったまま飛んでいっている。

ここから、機体がやや左を向き始める。右からの風にあおられているようだ。

高度や速度、姿勢は安定なものの、

機体の向きはどんどん左方向へ流れていく。

 

応援団を筆頭に、大学の校歌を歌いながらみなで応援を続ける。

順調に飛行距離を伸ばす

やや風にあおられ気味なものの、飛行そのものはとても安定しているようだ。

スタートから数分後、もう機体は肉眼では捉えきれないほどに小さくなってしまった。

歴代の早稲田チームが大会公式記録としては残せていない飛行距離1kmを突破したというアナウンスが入り、応援団が湧く。

しかしその後着水とのしらせ。

残念がりつつも、歴代の記録をどれくらい伸ばすことができたのか、飛行距離の発表を待つ彼らに、残念な結果が待っていた。

 

失格

モニタには、彼らが失格となったことが告げられている。


落胆する一同。


会場のアナウンスが、失格の理由を説明している。

大会の規則によると、飛行機は地上の施設の上を飛んではいけないことになっていて、今回彼らの飛行機は防波堤の上を越してしまったらしい。

→会場周辺の地図

上の地図で、飛行機の出発地点は中央の十字のあたり。機体は北西の方向に向けて出発したものの、南向きの風を受けて進路がどんどん南西に向かい、地図左下の「彦根港」のあたりに突き出している防波堤を越してしまった、ということのようだ。


結果をただただ残念がる女性スタッフ。

湖面から回収されてくる機体を待つ。手前は尾翼・操縦系パートリーダーの山本君。


のちにパイロットの宮内君に確認したところ、防波堤の上を飛んではいけないというルールはもちろん把握していたけれど、風にあおられて進路が変わり、防波堤が見えたときには、その手前に降ろすための距離の余裕がなく、安全のため、失格することを分かった上で、防波堤を越してから着水させた、とのことだった。

 

もう来年への準備が始まっている

落胆する彼らの前に、回収された機体が戻ってきた。

着水がとてもきれいだったことをうかがわせるように、機体のほぼすべての部分がまったく壊れていないままだった。着水の仕方によっては主翼などもかんたんに損傷してしまうため、これはとても珍しいことらしい。

機体を確認した彼らの口から「こいつはすごい」「このままもう一回飛べるんじゃないか」といった言葉が聞こえてきた。

このチームの伝統で、チームの指揮を行う主要メンバーが、この瞬間、現3年生から2年生へと引き継がれる。落ち込んでいると思った3年生は意外にも安堵からか笑顔を浮かべるものもあり、2年生は落胆するひまもなく来年に向けてチームの指揮を始めていた。


戻ってきた機体。パイロットが乗り込む部分(フェアリング)を除くほぼすべてのパーツが無傷。

この瞬間にリーダーが交代する。右側でメガホンを取っているのは、新チーフの2年生吉村君。

情熱を費やすことの尊さ

人力飛行機をひとりでつくることはできない。

それぞれのチームが、時間と手間を費やし、お金と知恵を出し合って、1年かけてようやく機体を完成させることができる。

だからこそ、その結果に心から喜んだり、悲しんだりすることができるのだろう。ちょっぴり高校球児のような、涙のすがすがしさを感じた。

大会後のボード。来年に期待。



 

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