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特集


ちしきの金曜日
 
「歩道橋」を鑑賞する

■浮かれ歩道橋たち

一方で、昨今どうかと思う「浮かれ歩道橋」も目にすることが多くなった。

とくに新都心系の街区にはこれまで紹介した、バリアフルに淡々と利用者を待ち続け、挙句に登るのしんどいからと車道を横切られてしまう老舗歩道橋をあざ笑うかのような、快適に利用できる歩道橋が多くある。

批判の方向性が間違っている気もするが、気にしない。


幕張新都心の浮かれ歩道橋の上。広々とした空間、清潔感ある素材、意味不明のゲート装飾。ちくしょう、快適じゃないか。


雨の日、日差しの強い日にもやさしい屋根付きの歩道橋。階段部の装飾も浮かれている。


これまで紹介した歩道橋と比べると隔世の感がある。これはもはや歩道橋ではなく「ペデストリアンデッキ」と呼びたい。ペデって呼んでやる。ペデ。

おしゃれタイルも、このありさま。ほんとにおしゃれにしてどうする。空気読め。


柵に関してもこの狼藉。入道雲に良く映えちゃってもう。

 

●架橋パターンと浮かれ具合

鑑賞ポイントとしてもっとも大きな要素となるのが交差点での車道のまたぎ方なのだが、この道路をまたぐパターンと浮かれ具合の間には関係があるように思われる。

まずはL字型にまたぐパターン。大振りではあるが、なかなか品のある歩道橋だ。


コの字型にまたぐパターン。ダイナミックだが、好感が持てる。


上2つのいかにも歩道橋らしい歩道橋の見所ポイントは、渡りたい経路によっては非常に大回りをしなければならない、という歩行者に対する不親切設計にある。

特に下のコの字型の場合だと、画面左下から左上に渡りたいときには、文字通りコの字にぐるりと回らなければならない。確かに理論上はこれで渡りたいパターンすべてをカバーできるが、あんまりな遠回りだ。いかにも歩道橋らしい。

これが浮かれ歩道橋になるとちゃんとロの字型になってしまう。「なってしまう」ってことはないんだが。


新都心らしい近未来風ペデ。落ち着いたグレーといい下から見上げた底部の湾曲処理といい、小憎らしい。


この歩行者に優しいロの字型パターンをさらに浮かれさせた展開としてはサークルパターンがある。

その名も「サークルウォーク」という浮かれたネーミング。文句を言いつつも思わずダイナミックなアングルで撮ってしまった。なんだか負けた気がする。





上から望んだペデ風景。どうしても左の柱を避けることができなかったが、この浮かれものにはこれぐらいがちょうどいい。


そしてさらに、人にやさしいもうひとつの浮かれ展開が、「X字パターン」。浮かれの極北だ。

中央のヨットの帆を模したデザインが小憎らしいが、全体の素材感はトラディショナルな質感でギリギリセーフといったところか。


このX指定歩道橋の特徴としては、歩行者のいかなる方向への横断パターンでも歩行距離が平等だという点にある。道を直線的に渡る場合でも、斜めに渡る場合でも、歩く距離は同じだ。これはコの字型はいうに及ばず、ロの字型、サークルパターン、いずれにもなかった性質である。

直線的に横断する場合はほかのパターンに比べて歩く距離が長くなってしまうが、このX字のコンセプトはあくまで平等性。双方痛み分けといった案配で納得していただきたい。これをwin-winの関係と言うのか。言わないな。



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