この季節、汗だくになって外を歩いたあと、冷房の効いた乗り物に乗るとスーッと汗が引いていき、心地良いことこのうえない。
「いやー、冷房ってのは素晴らしいね」などと思いながらしばらく乗っていると、今度は途端にブルッと寒気を感じ「ここで寝たら風邪をひく。冷房効きすぎ」と思ったりもする。
いったい乗り物の温度って、何度くらいあるんだ? そんな疑問から、温度計を片手にいろんな乗り物に乗って、実際の温度を測ってきました。
(高瀬 克子)
まずは新幹線から
夏休みはいつも実家に帰って、墓参りをすることにしている。そんなわけで、今年も故郷である秋田へと向かうべく、東北新幹線に乗った。…のだが。
えー、座れませんでした。事前の予定が立たずに指定席券を取っていなかったため自由席での帰省となり、その結果がコレ(乗車率、推定170%)だったのだ。すでに吊革のない満員電車といっていい。
時は8月13日の正午、お盆真っ盛りである。東京駅のホームは「国民大移動」という言葉がピッタリなほど人で溢れていたが、車内も負けじとスゴいことになっている。
新幹線に対しては、つねづね「冷房が効きすぎ」だと思っていた。「JRは冷暖房のサービスだけはいいよね」など、嫌味のひとつも言いたくなるほど「冷房過多」のイメージがあったのだが、今回ばかりはそれが当てはまらない。なんといっても、この人の多さだ。
それぞれが36℃ほどの体温を空気中に放出し、しかも客室とデッキを仕切る自動ドアは開きっぱなしときた。いかにも冷房が効かなそうなシチュエーションである。
…だが、それにしては暑くない。「いったい、車内は何度になってるんだ?」と、さっそく持参した温度計を取り出してみた。
数字の上では30℃を越えているものの、体感的にはこれくらいがちょうどいい。寒くもなく、暑くもない。これが風呂なら「いい湯加減です」と、鼻歌でも歌いたいところだ。
もしや、心地よい温度というのは30℃前後を指すのだろうか。30℃というと暑く感じそうだが、どういうことだろう。送風の当たり具合だろうか。ま、温度調査はまだ始まったばかりだ。先を続けよう。
温度低下
東京駅を出て約2時間。仙台で乗客が大量に降りてくれたおかげで、やっと座席に座ることができた。そろそろ立ちっぱなしの状況がツラくなってきていた頃だっただけに、ありがたい。
空席もちらほら見えてきた。そういえば立っている時よりも、少しだけ空気がヒンヤリしてきたように感じる。よし、再び温度計をチェックしてみよう。
おおおお。人がいなくなっただけで3℃も下がっている。やはり、人から発せられる熱というのは馬鹿にならないらしい。
だんだん肌がスースーしてきた。「なにか羽織るものを持ってくるべきだったか」と思い始めたあたりで、新幹線は終点の盛岡に到着。
結局新幹線は、やっぱり寒い乗り物だった。JRには、乗客の増減に合わせた温度調整を望みたいところだが、こればっかりは個人差があるだけに調節も難しいんだろう。いや、でもなんとかしてください。
さ、新幹線を降りたら、次は高速バスへと移動です。