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特集


ひらめきの月曜日
 
風鈴と大地が揺れた日

揺れる大地と風鈴と

再びテントへ。銀座の貴金属会社が作っているという「銀座風鈴」のコーナーで、係のお兄さんが熱心に風鈴の説明をしていたので、どれどれ、とばかりに耳を傾ける。

「この風鈴は純金で出来てます。いい音でしょう(鳴らす)」
── あー、ほんとだ。
「重いですよ。ちょっと持ってみますか?」
── え、いいんですか?


なるほど、ずっしり。
「いざという時は換金も出来ますから」

さすがの重さだった。しかし、軒先に純金がぶら下がっている家ってのはどうなんだ? 風鈴 meets 金。風流なんだか悪趣味なんだか。思わず、金箔で茶室をこしらえたという秀吉を連想してしまう。

── で、コレ、おいくらなんですか?
「25万円です」

…25万円て。あいにく、25万円が風に揺られて奏でる音をBGMに、のんきに昼寝が出来る剛気な性格を持ち合わせていない。
絶句している私に、お兄さんはたたみ掛けるように、こう言った。

「こちらのプラチナ製は、40万円です」
── えーっ!


パッと見、とても40万円には見えませんが
驚きすぎて、売れてるかどうか聞くのを忘れました

その時だった。地面がグラリと大きく傾いたように揺れた。

「あ、地震」と思う間もなく、テントの中の風鈴が「グワッシャグワッシャ」と音を立てて跳ねるように揺れ、女の人の「キャー」という悲鳴が聞こえた。テントの内側にいたお客さんが、慌てて外に出る。

私はというと、脚に根が生えたように、プラチナ風鈴の下に突っ立っていた。「風鈴に潰されて死ぬのか。でも40万円と一緒だしな」と、一瞬だけ思った。(一瞬だけですよ)

地震は、わりとすぐに収まったように思う。外にいたせいだろうか。

傍にいたカップルが「人が少なくなった今のうちに、プラチナ風鈴に触ろうよ」と言っているのを聞いて、人間って強いなーと思いながらテントを出ると、境内はこんなことになっていた。


みんな踊りに夢中

島倉千代子が歌う「やくよけ風鈴市音頭」に合わせて、踊りの輪が何重にも広がっている。

いやー、なんだか妙に感心するのと同時に、安心してしまいました。

その後も、特に地震に関するアナウンスを聞くこともなく、風鈴市はまたチリンチリンという風鈴の音と共に始まった。まるで、何ごともなかったかのようである。


再びテントへ舞い戻る皆さん
案外、こんなもんかもしれません

 

再び風鈴を見る

かく言う私も、気に入った風鈴を探すべく、テントを回る。

家には南部鉄器で作られた風鈴が1つあるため「ここはひとつ、ガラスで出来た風鈴を買おう、しかも可愛らしいやつを」という理由で選んだのがコチラ。


川崎大師オリジナル「厄除けだるま風鈴」
もう厄年じゃなくても、なんとなくありがたい

風鈴を1つ買うと、一回ガラガラを回せるというので、さっそくトライ。なんと1等は「金の風鈴」だ。例の25万だ。精神を集中させる。こんなに真剣にガラガラを回すのは初めてじゃないだろうか。


ちなみに「銀の風鈴」は1万3千円。こうなったら銀でもいい
赤い玉っころがポチッと出た。4等でした

気に入った風鈴も買え、思い残すことなく川崎大師を後にする。

京急川崎大師駅前に、ちょうどバスが止まっていたので、川崎駅までバスに乗ることにした。ここでやっと携帯を取り出し、地震の情報を得る。まさかあれが、震度5だったとは。

川崎駅ではJRが運転を見合わせており、仕方なく既に運転を再開していた京急線を利用することで、なんとか都内へ戻ることに成功。「人は踊り続けるが電車は止まる」という事実に思いを馳せ、長い時間をかけて、なんとか無事に家に帰り着いた。

 

風鈴を作りたい

「それにしても40万とか25万の風鈴って、確かに音が良かったな。あれは風鈴の音というより、お金の音だよな」と、帰ってからも気になった。気になったので、作ることにした。

風が吹いたら音がして、もちろん換金も可能な風鈴。というか、そのものズバリ、お金の風鈴。…これが意外に簡単に出来たのです。


 

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