●鎧でビジネストーク
てくてくとオフィス内を歩く鎧。行く先々で聞こえるざわめきは、心の中で耳をふさげば聞こえない。どうでもいい内なるドラマが繰り広げられる中、広いテーブルのあるミーティングスペースへと到着。
いよいよ本格的なビジネスの話。とは言っても、余計な口を出してもこんがらがりそうなので、ここはプロである同行の営業担当者に任せておく。「そうですね」「ええ、いいですね」と相槌ばかり打つ鎧。
ちなみに左端で笑いをこらえきれないでいるのはデイリーポータルZの古賀さんだ。
営業担当ががんばればがんばるほど浮き彫りになってくる状況のおかしさ。右の写真の中ほど、やはり笑いをこらえきれないでいるのはデイリーポータルZのウェブマスター・林さんとライターの住さんだ。
けじめつけようよ、あくまでビジネスなんだから。そんな風に鎧が言っても全く説得力がない。
ミーティングスペースということで、話を効率的に進めるためのホワイトボードも設置してある。ここで今後の協力についてのまとめをしておくべきだろうか。
ぜんぜんまとまってないし、そんなことは話してない。長篠の戦いなんて、とっくの昔に終わってる。
一通りの話が終わると、林さんがなぜだか持っていたバットで私をつつき始めた。
へっ、ちっとも痛くない。精神的にはネガティブな影響を与える鎧だが、物理的な防御力は確かに高まっている。すっかり見失っていたが、ここに来て鎧本来の目的を再確認だ。
ここまで丸腰だった鎧の私だが、やはり武器ともなり得るバットを持つと雰囲気も変わるだろうか。
予想に反してあくまで安全そうに見える鎧だが、なんだかおかしいのは否めない。何をしてもいつもとは違う風に見える鎧。ビジネスシーンを戦場と例える言い方があるが、本気で戦場にふさわしい格好をしてしまったあたりでねじれているんだと思う。
●調子に乗るなよ鎧
ニフティでの打ち合わせも円満に終わり、無事発売の運びとなった拙著。それはいいのだが、営業担当ががんばり過ぎてしまったのだろうか、サイン会まですることになったのだ。
控え室で差し入れのケーキを食べて緊張感をほぐす。一度鎧を着てしまうとトイレに行くのが大変なので、水分補給は控えておいた。そのあたりはちゃんと計算できる鎧でいたい。
やるって言ったんだから仕方ない。なんで鎧着てるんだろなんて考えるだけ野暮だ。
来て下さった方々に本を渡す。そのあとおじぎをするのだが、あまり深く頭を下げすぎると、兜についている飾りのとがった部分が当たってしまいそうで危ない。その辺の危機管理はちゃんとできる鎧でいたい。
最近流行りのクールビズに対する自分なりのアンサー・鎧ビズ。勢いだけで言ってしまっている感は否めないが、勢いで押し通すしかないのだとも思う。
●鎧が織り成す光と闇
人はなぜ鎧を着るのか。それは鎧がそこにあるからだ。
いや、そうじゃないだろう、もともとはなかっただろう。わざわざ買っただろう。
世の中には深く考えても答えの出ないこともある。私が今言いたいのは、周りのいろいろな人たちを軽い悪夢につき合わせてしまってごめんということだ。
取材中、何度か別々の人にかけられたのは「鎧、似合いますよ」という言葉。どう解釈していいのかわかることもなく、今も奥の部屋の隅に鎧のでかい箱は置いてあるままだ。
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ライター・小野法師丸の個人サイト「テーマパーク4096」での日替わり読み物コーナー「コラム息切れ」をまとめた本が出ました。書き下ろし記事「月刊鎧ライフ」では、マイ鎧を着用して12のミッションを敢行した悲喜こもごもを掲載しています。
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