●文武両道を目指す鎧
「文武両道」という四字熟語があるが、鎧を着たことでそんな言葉もより現実的になってくる。鎧を着ていることで「武」は達成しているからだ。
文武両道を目指して試みてみたのに、かもし出てくるのはうそっぽさばかりなのはなぜなんだろう。本を読んだりピアノを弾いたりする前に、気づくべきことがあるような気がしてくる。
そもそもピアノなんか弾けない。それに、ピアノが超うまい鎧というのも変だと思う。絶対間違っている。
さまざまな思いさざめく胸の内も知らないのか、妻は私が鎧であることとは関係なく家事の手伝いを頼んでくる。
たぶん私はこのとき、世界でいちばんせつない鎧だったのではないかと思う。見た目ばかりは勇ましいが、やってることはタオルの取り込みだ。ちゃんと乾いているかどうかを確かめて取り込むあたりも、せつなさを増幅させる。
他にも物を運ばされたりゴミをまとめさせられたりする鎧。これでいいのだろうか。
鎧を着てると疲れやすいんだ。そのあたりわかってくれているのだろうか。
歩くたびにガチャガチャと音を立てる鎧。通気性だって悪い。鎧は家事には向いてないと思う。無意味なところで気合いを入れても、ちっとも意味はないのだ。
●鎧、いざ出陣
家事を手伝っていたらすっかり忘れていたが、今回の記事は「鎧でビジネスシーン」。そう、これからちょっとした商談があるのだ。いよいよ出陣の準備にかかる。
馬は持ってないので自転車にまたがってみたが、ここでもにじみ出てくるのはファニーな感じばかり。戦国時代やビジネスシーンのハードさはかけらも見当たらない。
そもそも先方と会う約束をしている場所は自転車で行けるような場所ではないのだ。ここはやはり現代の鉄の馬・自動車を駆ろう。
いつもの調子で乗り込もうとしたら、兜がひっかかってうまく車に乗り込めない。変に勢いよく乗ろうとした分、枠にぶつかったダメージは大きい。首がコキッと鳴った。
鎧で車に乗るときには、兜に気をつけろ。経験から出た言葉はやはり重みが違う。
首を巧みに傾けてなんとか運転席に乗り込む。首の角度によっては頭頂部が天井にぶつかるが、まあ運転にはそれほど問題ないだろう。今度こそいざ出陣だ。
とは言ったものの、先方の待つ都内には車で2時間半ほどかかる。何も今から鎧を着ていることはないんじゃないか。
武士に求められるのは冷静な判断でもある。一回元の自分に戻って、普通に都内を目指したい。