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特集


はっけんの水曜日
 
小さな穴で写真を撮ろう

写るまでじっと待ちます

朝一番、自宅の屋上に登って撮影をすることにした。一見荷物にしか見えないピンホールカメラを撮りたい方向に向けてセットし、シャッターとなるダンボールのふたを開ける。そしてじっと34分間待つ。

向きを合わせてシャッターを開け
待ちます。
じっと、ただ待ちます。

朝の30分は世間では貴重な時間だろう。朝食を準備して食べて、速い人ならば後片付けまで終わらせることができるかもしれない。というか僕ならあと30分寝ていたい。だけどピンホールカメラマンはカメラの隣で息を殺してじっと待つだけなのだ。

34分露光した後のカメラ。やっぱりただの荷物に見えます。

34分経過したらシャッターを閉じて持ち帰る。これから印画紙を現像するわけだけど、うかつに開けるとやっぱり感光してしまうのでここからの作業もまた風呂場暗室で行うことになる。

もそもそ。
もそもそもそ。
もそもそもそもそ。
おおおおっ。

 

出ましたね。

緊張の現像です

印画紙をカメラから取り出し、現像液、停止液、定着液の順に薬品にくぐらせていく。実のところ本当に写っているのかどうかかなり不安だった。だってダンボールだし、ピンホールだし。

不安を抱えながらも現像作業を進めていくと、ぼうっと像が浮かび上がってきた。おお、写ってる写ってる、すげえすげえすげえ。赤い闇の中で僕は一人興奮していた。


撮影した印画紙をそのまま並べた状態。白黒が反転しています。

 

これもまた大成功です

写っていた写真は、思いのほか鮮明だった。今回は印画紙に直接感光しているので、その特性上ネガの状態、つまり白黒が反転した写真となって写っている。

画像処理によって白黒を反転してみた。するとどうだろう、そこに現れたのはまさにあの時僕の目の前に広がっていた朝の風景だった。30分間を一枚に凝縮した風景だ。


白黒を反転させると見事にあの時の風景がよみがえりました。

ピンホール、はまります

ピンホールカメラで撮った写真を見ていて思った。普通のカメラならば一瞬を切り取るという感じなのだけど、露光時間の長いピンホールカメラの場合、流れている時間を一枚の写真に凝縮して焼き付けているという感じがするのだ。目の前の時間の流れが一枚の写真の中に収められている。これってピンホールカメラならではの感覚だと思う。

ある写真家が「レンズの性能が云々言う前に、我々はピンホールカメラに戻る必要がある」と言っていたのを思い出した。カメラとレンズにまかせっきりの写真よりも、画像は劣るかもしれないけどピンホールカメラで撮った写真には何か魂が込められているのだ。僕もデジカメを捨ててこれからはピンホールカメラ一本で取材活動をしたい、とまではやっぱり思わないけど、たまにはのんびりと使ってみたいです。

世界ピンホール写真デーにはもちろんこのダンボールカメラで参戦します。皆さんもまだ間にあります、身近なものでカメラを作って参戦しましょう。



 

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