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特集


ちしきの金曜日
 
ウサギをめぐる平日
さあ、ウサギはどこにいるのかな!?

またしても河原である。

河原での騒動といえば、真っ先に思い出されるのが、多摩川に出現したアザラシ、弊サイトでも度々取り上げたことのある「タマちゃん」をめぐった一件だろう。社会現象にまで発展したあの一件ほどには話題になってないが、タマちゃんと同じくらいファニーでユーモラスな珍騒動が、墨田区・荒川の河川敷で持ち上がった。

そこで、今回はその珍騒動の当事者たちに話を訊いてみることにした。

ちなみにかわいいウサギの画像は最後のページに掲載してある。それまで文章が多いが、頑張って読みすすめていただきたい。読者諸君の健闘を祈る。

(text by 宮崎晋平

墨田区・荒川の河原でウサギが大量発生したという、 およそショッキングとはいいがたいユーモラスでファニーなニュースを、すでに読者の皆さんもご存じのことと思う。
リンク先をみればこの一件の概要は掴むことができるが、もしかしたらそこからこぼれ落ちている何かがあるかもしれない。

そこで、まずはこの河川敷を管理している、荒川下流事務所管理課の竹内秀二さんにお話を伺ってみることにした。

 

荒川下流河川事務所 管理課
竹内 秀二さんのお話

 

管理課課長の竹内さん。インタビューの為にわざわざ朝早くに出勤してくださいました。

そもそもの発端

河原に住んでいる人が飼っていたウサギがものすごく増えちゃって、1月から減らしてくださいってずっと言っていたんです。その後、2月8日に私も含めた職員が、現場でウサギが夜間に堤防の地面 を掘っている現場を目撃したんですね。目で見た範囲では20羽くらいがみんなシャカシャカ穴を掘っていて、見た目には可愛かったんですけど(笑)、堤防に穴が空いていると危険なので、 翌週の15日には堤防の方にこないようにしてくれっていう話をしたんです。 けれど、それは無理だということなんで、22日に廃材を利用して柵を作ることになったんです。

10メートル四方くらいの柵で、真ん中に仕切があるんですけど、使い方はこれから相談して、飼い主ご本人にウサギを柵の中にいれていただくことにして。

今後は、数を減らしてもらうっていうのが一番重要なことだと考えています。今回はいろいろ報道されたおかげで、結構もらっていく人が増えてきて、数は減っているみたいなんですけど。

私たちはウサギ自身が憎い訳じゃないんで、ウサギをいじめようと思ってやっている訳じゃないし(笑)、その辺は生き物ですから充分気を使いながら対応させて頂いているつもりなんですが、「うさぎをいじめるな」とか「柵を作って税金を無駄 遣いするな」などの批判の声があると、ちょっと寂しいですね。お金もかけないように素早く対応して、堤防のためにもウサギのためにもなるようにしたと思っているんですけど。

手探りで進むウサギへの配慮

後は衛生状態とか生態系への影響っていうものの確認なんですけど、私たちはそういうことに関しては素人なんで、実はよくわからないんです。
このあたりは少しずつ勉強してるんですが、知識もないしどういう機関にやってもらえるかも分からないので、我々ができることをやるしかないのが現状なんです。

保健所やそれに準ずるような組織にも連絡をしてはいるんですけど、どなたに電話しても「うちの担当じゃない」っていうところばかりで、「私が担当です」っていう方はひとりもいらっしゃらないので、本当に困っています(笑)。 これを読んでいるどこかの機関の方が、名乗りを挙げてくれると大変に助かるんですけどね(笑)。

実は毎日地道にしていた作業

あと、これは土木関係のモグラの研究論文のレポートなんですけど(下図参照)、ウサギの穴も同じで、小さい穴でもだんだん水が入ったり染みたりして浸食すると大変危険なんです。そういうことを口で説明してもなかなか分かってもらえないんで、こうしてイラストをお見せするようにしているんですけど。

 

モグラの被害も結構深刻なものなのだとか(土木技術資料39-9より引用させていただきました)。

今回はウサギの穴だったということで、堤防の補修しているところをカメラに撮られたりしましたが、それは私たちが通 常の業務の中でいつもやっていることなんですよ。

堤防を造ったら後はなにもしてないようにみえるかもしれませんが、毎日、60kmくらいある堤防を巡視していて、例えばコンクリートのひび割れがあれば直したり、土が削れているところは直したり、そういうことは日々行っているんです。年に1・2回は、60kmを歩いて危険なところがないか点検もしますし。

やっぱり皆さんの住んでいるところを全部管理していかないと、「ここだけ強い」とか「ここだけ弱い」とかっていう風になっちゃうと、洪水の時に機能しないですからね。

ウサギがいるところだけ補修していると誤解されないかと、ちょっと心配しているんですけどね(笑)。


最後に、ウサギたちにタマちゃんみたいなニックネームをつけるとしたら、いったいどのようなものが相応しいか尋ねてみることにした。


ウサギにタマちゃんみたいなニックネームをつけるとしたらですか!? タマちゃんは可愛いだけかもしれないですけど、今回はウサギは憎い訳じゃないけど悪さをしますから、できれば私はつけたくないですね(笑)。

皆さんが勝手につける分には構わないけど、私の立場ではつけられないですよ(笑)。「堤防カジッタ君」でもいいですけど、あんまり可愛い名前はやめてもらいたいですね(笑)。

まあ、ウサギには幸せになってもらいたいですね。現状では数が多くて喧嘩になったりもするらしいんで、ある程度数が減れば、もう少し幸せになると思います。もしかしたら、それは人間の勝手な思いこみかもしれませんけど。


ということで、ウサギのニックネームは「堤防カジッタ君」に決まった。 それでは、実際にカジッタ君のいる河原へと、足を運んでみることにしよう。


 

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