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はっけんの水曜日
 
誕生日に人生を再起動したいの

15時、都内某所。

前からやってみたかったことの1つに「酸素カプセル」というのがあった。マイケル・ジャクソンやベッカムが愛用しているというアレだ。
酸素カプセルに入ると、血が全身にめぐり、若返り、肌もツヤツヤになり、代謝も良くなってヤセて、怪我もすぐに治るのだという。本当なんだろか。

こんなやつ。

私が行ったのは専門のサロンだった。白い壁にスタッフは白衣で、歯医者さんのような雰囲気の中、カウンセリングを受ける。
「はい、こんにちわ。まず説明をしますね…」
マスクをした女性が、カラーコピーの入ったクリアファイルを使って、「これはもともと、NASAで軍需産業をやっている会社が開発したカプセルで…」とトークを始めた。
……だから体験コース嫌なんだよ! 体験コースったって5000円以上するんだから、セールストークなしかと思ったのに! うざいなあ早くカプセルに入れてくれよ! と思いながらも、にこにこ「そうですかあああ〜」と話をきく。
そういえば前も、たわむれに行ってみた体験エステで、3時間みっしりセールストークをきかされ、「こんなにしつこいと、金払うから解放してくれ、っていう気分になって契約しちゃうんだろうなあ〜」と思いながら、根性出して断ったことがあった。美容院みたいに、1回分スパっと、フラっと行けて明朗会計にしたほうが、利用者増えると思うのに。

流れるような説明のあと、「ほんとにねえ、健康になって若がえっちゃいますよ。あのね、私いま風邪ひいちゃってるんですけど、これって忙しくてカプセル入れなかったせいなんですよ〜」と彼女は締めた。そうすか。

宇宙船のような棺桶のような、カプセルにやっと入る。服はそのままで大丈夫だ。

「圧力がかかるとき、耳抜きをしてください、あと気持ち悪くなったらこのブザーを押してくださいね」
リモコン式のブザーを渡されて、横たわる。
ちょっと怖かったけれど、以前スキンダイビングの取材で、5メートルほど素潜りしたことがあるので、耳抜きは大丈夫だ。鼻をつまんで、鼻に「んっ」と力を入れて、耳がペチャパキッといえばいい。

ぷしゅーーーーーーーーー。
酸素が入って来る音がした。

あ、これ、圧力ナベと同じ構造か、と思いながら、ダイコンに醤油汁がしみていくビジュアルを想像していた。私はダイコンみたいなものか。



酸素が満ちて来る。確かに耳に来る。

じわじわじわじわ、身体のすみずみの血が流れているような感覚があった。
温泉に長く入ったときのような。いや、全速力で走ったあとに、寝っころがって休んだときのような。不思議な感じ。

頭もぼーっとしていた。

身体中がじわじわ、し続けた。じわじわ、じわじわ……。

……カプセル体験の50分は、あっというまだった。

出てからもセールストークを少しされたが、「時間が不規則な職業なので、月額で払うのより、割高でも、ビジター利用で続けたいですう〜」と正直ベースで答えて、解放してもらった。

放心したまま、街を歩く。腕をまわず。……疲れがとれていなかった。
ふと目に入った鍼灸院の看板をみて、ふらふら入ってしまった。
「うわ、かったいですねえ〜」「足もむくんでますねー」「これ、奥まで凝っちゃってるんで、また近々にほぐしに来てくださいねえ〜」

オプションでカッピングをしてもらった。背中に丸いアザが、いくつも出来た。
……酸素マシンが効かなかったというより、私の体調が悪すぎるんだろうなあ、と思った。



 

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