デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

特集


ひらめきの月曜日
 
箸を極める

初めての箸づくり

まずは木材売り場へと向かった。せっかく作るからには、材質にもこだわりたい。たとえ形はいびつでも、いいものを作りたい。


シナ。なんと42円。めちゃ軽。箸に向いてる木材なのかは不明
黒檀、220円也。これは削るだけにして、漆は塗らずに使おう
漆は鍵付きのガラスケースに収納されていました

箸は口に入れる物だから、化学合成された漆ではなく、天然のものを使いたい。しかし漆については「カブれる」こと以外、知識はゼロだ。

そこで対応してくれた店員さんに、漆の塗り方など、ここぞとばかりに聞きまくった。

店員「ところで、何に塗るんですか?」
私「えーっと、…口に入れる物に使います」

なぜか「箸を作るんです」とは言えなかった。たぶん笑われるのがイヤだったのだと思う。


彫刻刀以外はすべて購入。準備万端です

それがですね、

買ってきた太めの角材を2つに分断したのち、それぞれを削って箸にしよう、という計画だったのだが…。


2つに切断できた頃には、指が何本か欠けてそうな予感がしたので中止。木材用ノコでも手作業は危険! こわい!
硬い黒檀は削るのが大変。彫刻刀より、ノミと木ヅチが欲しくなりました。同じく中止

すっかり意気消沈。せめて好きな居酒屋の割り箸で挑もう

自分の能力を過信してたとしか思えない。

一本の太い棒から箸を削り出すことは、私にはムリだった。出来たとしても、何年かかるか分からない。今回ばかりは職人の偉大さがよーく分かった。無茶だ。無謀でした。

ただ、買ってきた漆がムダになるのは惜しい。

そこで、割り箸を好きな形に削り、漆を塗り込んでいくことに予定を変更。そういえば子どもの頃は、鉛筆をカッターで削るのが好きだった。それくらいなら、私にも簡単にできるだろう。


気持ちいいようにサクサク削れます
だいたい、こんなもんか?
漆用の紙「摺用ペーパー」で、漆をすり込んでいきます

そういえば「銀座夏野」の高橋さんは「塗った漆を乾かすには湿度のある所がいい。段ボールの中にゆるく絞ったタオルを置いて、その中に入れておけば大丈夫」と言っていたが、今回はそれさえもパスすることにした。まぁ、なんとかなるでしょう。


塗り1日目。ちょっと雰囲気でてきましたよ

 

日課と化しました

漆は何度も重ねづけするといいらしい。毎日、漆をせっせと塗り付けてから寝る日々が続いた。


寝る前にすりすり。楽しい
ふと気がつくと、指にべったり漆が染み出していた

つい油断して手袋もしないままに作業していたが、そういえば漆って、カブれるんじゃなかったか。ちっとも痒くないが、大丈夫なんだろうか。山歩きの好きな秋田の友人に、電話で聞いてみた。

―― 漆でカブれたことある?
「いや、私はないけど、カブれた人なら山ほど知ってるよ」
―― どういう症状が出るの?
「もう痒くてたまらないらしい。で、掻きむしって皮膚がボロボロになって…。ヒドい人になると、漆の木を見ただけで体が痒くなるんだって。でも、なんで漆のことなんか聞くの?」
―― うん。いま、家で箸に漆を塗っててね。
「はぁ? とにかく1度目は無事でも、2度目で反応することがあるから気をつけなさい!」


なんだこの手は。私は漆塗り職人か

「気をつけなさい」と言われても、もう手遅れな気がするほど漆まみれになってしまった。ちなみにコレ、何度石鹸で洗っても落ちない。

仕方ないので、カブれなかっただけでもありがたい、と思うことにしました。自業自得です。

 

ついに完成

漆を塗ること一週間。
まだまだ塗り続けたかったが、「もうこれ以上は色が濃くならないだろうな」と判断し、作業を終了することにした。


♪せーかいーで ひーとーつ だーけーの 箸
元の割り箸と並べてみた。もう、まるで別物

色がまだらなのも「オリジナル感」というか「味」というか、まさに「私だけの一膳」を引き立てる結果となってくれた。

大変に満足です。


あまりにも身近な存在すぎて、いままで箸をじっくり観察することがなかったが、いやー、箸っておもしろい。これからは、もっと意識的に箸と付き合っていきたいです。

箸の店も楽しかったが、箸作りもとても楽しめた。次回は当初の目的どおり、じっくり木を削り出すところから作ってみたい。

袋に戻すと違和感が

ところで、手についた漆の落とし方をご存じの方がいらっしゃいましたら、御一報くだされば幸いです。切実に困っております。


 

▲トップに戻る 特集記事いちらんへ
 
 



個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.