●検証9:落ちてきたバケツが頭にスポーン
落ちてきたバケツが頭にスポーン。突然の出来事での驚き、そして前が見えなくてあわあわ。あり得ないくらいマンガ的だ。
まずバケツが落ちてくるというシチュエーションだけで普通はないのに、さらにそれがうまく頭にかぶさるなんて。いかにもマンガというシーンを「そんなにうまくいくかよ」と鼻で笑いつつも、ほんとにあったら楽しいだろうなと思いはしないだろうか。
再現しようとしているシーンからしてこれだ。どう考えても普通では起き得ない。
撮影場所をどうしようかと迷ったのだが、バケツを落とすのにちょうどよい窓があるということで妻の実家を借りた。バケツを構えているのは妻の母、つまりは義母だ。
義母が義理の息子に向かってバケツを落とす。やってることは現実化なのに、なぜだか現実からどんどん遠くなっていく気がする。
位置をうまく合わせて、せーのの合図で落としてもらう。
かぶさることなく頭にヒット。結構な衝撃。
窓から義母が「だいじょうぶー?」と聞いてくるが、その声には半分笑いが入り混じってるようにも聞こえる。無理もないと思う。理解してもらえるか不安な気持ちで頼んだのだが、楽しくやってくれているならそれでうれしい。
はじめは金属製のバケツでやろうとしていたのを止められたのだが、本当によかったと思う。
このあとも何度かやったのだが、ゴーン、ゴーンと来るばかりでなかなかうまくいかない。
6、7回やっただろうか、ついに頭にかぶさった。驚きゆえだろうか、そこに痛みはなく、急に緑で覆われた視界が現れたといった感じだ。おお、確かに前が見えないぞ、求めていたのはこれだ。
上の窓から義母の歓声が聞こえる。目には見えなくとも、手を叩いて喜んでいるのがわかる。
「やったわね!」 「ありがとうございます!」
通常ではあり得ない形を通して深まっていく義母との絆。
実際にやってみる前、空中でバケツが回転してうまくいかないのではないかとか、ケガするからやめろといった意見を周囲から聞かされ、あきらめようと思ったりもした。だが、こうしてみると、素直にやってみてよかったと思える。
「誰かー、たすけてー」
−おわり−