すごく良かったのだ。山形の自然の中で、でも今風のがちゃがちゃした女子高生達があんまり苦労せずにだらだらバキバキビッグバンドになっていく。おもしろい!
おとなの私もすっかりスウィングしたくなった。トランペットとか吹きたいよ!
そんなわけで、今回はトランペットを吹きます。おとなだけど、お金がないので、紙で作ることにしました。
(text by 古賀 及子)
買えないなら作ればいい
映画の中でも、スウィングガールズが苦労したのは楽器の上達よりも楽器の調達だった。
トランペット、トロンボーン、サックス…。スウィングするための楽器はやっぱり高い。ガールズは女子高生らしい方法で楽器を手に入れたけれど、私はおとなだ。もう少し知恵をきかせて楽器の入手問題を解決できないだろうか。
そんなとき、図書館でみつけたのがこの本。
紙ときた。が、あなどるなかれ、本で紹介されている楽器のほとんどは本格的な笛。チャルメラやホイッスル、リコーダーが作れるという。そしてその中にはなんとトランペットも。これで私もスウィングガールズになれる!
それにしても金管楽器が紙で作れるとは。もしかしてこれは錬金術だ。
本当に鳴るのか?
しかし、そもそも紙で作った楽器って本当に鳴るのだろうか。手始めに本の最初に載っている一番シンプルな「信号笛」というのを作ってみることにした。 (今回参考にした本は創和出版 繁下和雄著「紙でつくる楽器」です)
材料は工作用紙1枚と蛇腹つきのストローだけ。
本によると、これでかなり大きな音が出るらしい。 「ハイキングに行ったとき、遠くの人と合図しあうにはぴったりの笛です」 とある。あんまり遠くの人と笛で合図したい機会はないのですが、トランペットへの足がかりにはなるだろう。
もうできた
紙を扇型に切ったら、あとは丸めて吹き口にストローをつっこむ、以上、というシンプル構造で、図画工作の現役を離れて久しい私にも20分そこらで作れた。
さて、どんな音が鳴るんだろう。吹いてみます。
あれ? うまく鳴らない。笛とはいえ、ストローと紙筒がドッキングしただけのものだ。吹くとウンとも言わずに息だけがラッパの外に抜けていってしまう。
「ばうー!」 あまりにも音がでないので、ヤケになって息を吹くとき声を出してしまった。当然だけど、ラッパから拡大されたダミ声が出る。それ、メガホンになってるよ。
本には吹き方の図も載っている。完全にコピーして実行しているのだが…。
「すー!すー!」 音は出ない。やっぱり肺活量が足りないのだろうか。
肺活量! そういえば映画でも最初はみんな肺活量が足りなくて大変そうだった。私ももっとダイナミックな息づかいをしなければ。
徐々に唇と腹筋が痛くなってくる。トランペットを作る前段階で、すでにトランペットの練習気分を味わえてる。
そして…。
出た!
音はこちら!
闇雲に吹いていたら、いつしか出た。初めて音が出たときの感動と驚きといったら。これが肺活量系楽器の醍醐味か。
リードとして付けた切り込みの入ったストローを挟む力の加減と息の強さに音を出すポイントがあるらしい。だんだんコツがつかめてきて、長く音をだしていられるようにもなってきた。
これならいける! 自信をつけ、いよいよトランペット製作に着手します。