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特集


フェティッシュの火曜日
 
かぶりものでモテたい
ひたすらちくちく縫う
「大学はいいところに行ったほうがいいよ」と偉そうにアドバイスするが説得力ゼロ。

となりの教室で毛皮部分の作業に

中身はできたので、まわりの皮の部分の縫製だ。(あ、そうだ、今回、本Zくんと区別をつけるために、まわりの皮を青に変えています)

藤原がつぶやく。

「……いま、僕、2年ぶりに本気出してます」

聞いてみると、2年前にはじめてオフ会というものに行ったのだという。そのときはなにかいいことがあったのだろうか?

「代々木公園だったんですが……、とある女の子が、ビール飲んじゃって……、そしたら笑いが止まらなくなって、3時間ぐらい笑いっぱなしで、みんな心配し始めたころに…、いきなり吐いて、解散になりました」

不条理な思い出である。

モテるためとはいえ、打ち込む姿に心動かされる
指から血が
はち切れんばかりの思いをのせて、夜は更けてゆく

藤原、こんなところで根性を見せる

作業開始から4時間30分経過。この1時間ぐらい僕も藤原も黙って作業を進めている。僕はときどき休んでいるが藤原はまったく手を休めない。

藤原がときどき指をなめているのでなにかと思ったら、指から血が出ていた。針で指を刺したらしい。鬼気迫る雰囲気である。すべてはモテるため。この根性をスポーツに向けたらどんな大会でも優勝できるだろう。でもスポーツには向けないのだ。

これでモテなかったらどうしよう。モテてくれ。僕も本気でそう思う。

「いま縫いながら、モテたときのこととか考えてる?」
(無言でうなずいて)「…どうしよう……。」

なにか藤原の頭のなかでは大変なことになっているようだ。女の子に追いかけ回されたりしているのだろうか。

「でも、着ぐるみで女の子が寄ってきたとして、それからの展開はどうすんの?」
「名刺を渡します」

それはまるっきり青山ブックセンターでのZくん2時間店長イベントだ。藤原はあのイベントを目の当たりにして、「着ぐるみ=モテる」と思ってしまったようだ。責任を感じる。

「でも、ここまでやって誰も相手にされずに放置だったら…」

やはりときどき不安になるようだ。「いや、そんなことない、きっとモテるさ」と言おうと思ったが、そんな気もするのでやめといた。


 

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