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はっけんの水曜日
 
そうだ、ヤキソバの町へ行こう



「あ、コメリだ」
「コメリだコメリだ」
「じゃ、道の反対側に……?」

ヤジルシもあった。




細い道に入る。
人がだれもいない。




「こういうとこに、店があるんですねえ」
「讃岐のウドン屋さんも、きっとこんな感じなんじゃないですかねえ。行ったことないけど」
「私もそう思う。行ったことないけど」
「しかし暑いですねえ」
「まだ6月なのに……夏の終わりみたいですね」
「確かに……夏休みのような気分になってきましたよ」

道ばたに、車が何台も見えてきた。

「あっ、きっとここだ」




店の前には、学生のものらしきチャリが、たくさんとめてあった。




「はい、いらっしゃいませー」

活気あふれる店内。じゅーじゅーと連続して麺を焼く音。家族づれ、中学生たちで席はいっぱい。

「あのう、2人なんですけど…」
「カウンターでしたら空いてますので、よろしければどうぞー」

座って値段をみる。小200円、中250円、大盛り300円。安い。

小盛りとラムネを頼んでみる。ラムネは80円だった。




「はい、おまたせしましたー」

え? これ小盛り? というくらい、量が多かった。198円パック焼そば1食分くらいはあった。

もぐもぐ。

「……うまい」
「うまいっす」
「麺は細くて、ちょっと固めで、ソースの味は強くなくて、粉の味自体が良くて…」
「うーん何かに似てる」
「沖縄の『ソーメンチャンプルー』に似てません?」
「うん、あと『ベビースターラーメン』にも似てる」
「似てるかなあ?」
「でも、今まで経験したことない味には違いないですよね」
「これは、ここでしか食べられませんね」

細切りキャベツしか入ってないのに、とても美味しかった。

後ろで、中学生たちが、楽しそうにおしゃべりしていた。

「……要は……っていうか実際のところ……だと考えるんだけどね」
中の男子のひとりが、一生懸命、難しい言葉を使おうとしていた。
「っていうかさあ、**商業の女の子って、カワイイらしいよ」
「**商業かあ」
「おまえ、行けるの?」
「えー、おれ、クラスで32人中、3番だよ」

彼らは喋りながらも、あっというまに、かき氷と大盛りヤキソバを食べきった。店の人に「ゆっくりしていっていいわよう〜」と言われながらも、「いや、俺ら、すぐ行きますから」と、大人ぶってこたえていた。

ここの焼そばは、彼らの中で、大切な思い出の味になるんだろうなあ……と想像した。




保冷庫には、キャベツがみっしり入っていた。
おもわず
「うわー、キャベツがいっぱい!」と口に出してしまったら、
「いやあ、これもスグなくなっちゃうんですよー」と
ご主人に笑顔で言われた。地元の人に愛されている、ほんとうの人気店なんだろう。


 

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