わふわふ、わふわふ。
「あらあら、まあごめんなさいねえ、このコったら」
その家の奥さんが出てきたので、
「今、ヤキソバ屋さんを食べ歩いてるんですけどー、この辺でいちばん美味しいところって、どのへんなんでしょうー?」
と、きいてみた。
「そうねえ、清水屋さんっていう店が、有名かしらねえ」
「それは、どこにあるんでしょうか?」
「ああとねえ、あそこの角を右にまがって、まっすぐかなり歩いたら、『コメリ』っていう、木材とか売ってる店の、オレンジ色の看板が見えるから、その向かいに『清水屋』ってヤジルシの看板があるから、そこのところを左に入って歩くと、あるわよう」
「……ありがとうございますー」
男性だったら、こういう道案内の仕方、しないよなあ、看板の色とか、印象のみで説明するやり方は……この人も『地図の読めない女性』なんだろうなあ、でも私も『地図の読めない女』なので、ちょうどいいかもなあ、などと考えながら歩く。
相当テクテク歩いても、「オレンジの看板」はなかった。
「道迷ってないかな?」
「いや、もうちょっとまっすぐ、歩いてみましょう」
『印象派』道案内を頼りにして、そのまま歩いて行ったら……あった。
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