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特集


ロマンの木曜日
多摩川の最初の一滴

熊も出るらしい

コンビニを後にして、いよいよ車は山を目指す。

「笛とか、持ってる?」
唐突に聞かれるが、そんなもの持ってる訳がない。
「あの辺、熊も出るから、後でオジサンの笛を貸してあげるよ」


熊が出るよ

えらい事になった。
これはもはやハイキングではない。軽い気持ちでやって来た事を後悔し、不安でいっぱいになる。

「ポケットウイスキーも買った方がいいな。そんな軽装じゃ寒くて大変だ」
僕の半ズボンをミラー越しに覗きながら運転手さんは更に不安を煽る様な事を言う。
「雨に濡れて寒くなったらウイスキー飲めばいい」
チョコレートにウイスキー。僕が遭難するのを前提に準備を進めている様に思えてならない。
僕は遭難してしまうのか?


酒屋さんは留守

登山口までの途中、酒屋さんに立ち寄るが留守だった。
「畑にいます御用の方はお声をおかけ下さい」


走る

入り口の張り紙を見て運転手さんが畑へ走る。
「すいませーん、お酒譲ってくださーい」

僕の為に走ったり大声を出したりしてくれている。さっき出会ったばっかりなのに、何ていい人なんだ。
この人の車に乗ってなかったら、ポケットにウイスキーを入れる事は出来なかったし、きっと遭難する僕は助からなかった。

しばらくお店の人を探してくれたが結局見当たらず、運転手さんはビールの自動販売機を指差して言った。
「この缶チューハイ買っておきなよ。これだってアルコールだから」
言われるがままに、缶チューハイを2本買った。ポケットには入らないが、きっとないよりはマシなのだろう。


運転手さんの指示で買ったもの全部

おにぎり、味付きタマゴ、お茶、アミノサプリ、缶珈琲、チョコレート、アメ、ほし梅、雨ガッパに缶チューハイ。(杖と懐中電灯は運転手さんの持ち物)
こうしてすべての買い出しが終了し、車は大菩薩ラインをどんどん登って行く。
「だいぶ高い所まで来ましたね」
「そうだね、作場平口で標高1200メートルはあるから」
クネクネとカーブを繰り返し山道を進む。1つのカーブを越える毎に30メートルは上がっているという。



今年の紅葉は色が悪い。
運転手さんは残念そうにつぶやいていた。



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