前田が下に降りて来て、こちら側も竿に直接糸を結び体重をかけて引く。
「よーし、糸が張ったぞー!」 75メートルの糸が張り、東京・神奈川間が繋がった。
「そっちの準備はいいかー!」 携帯で川崎側の状態を確認する。
「はい、いつでも大丈夫です」
「じゃあ、しゃべるぞ」 「はいっ!」
紙コップに向かって大声を出す。糸が振動する様な音が聞こえ、確かな手応えを感じる。
伝わったはずだ。 すぐに川崎側の携帯を鳴らす。
「聞こえた?」 「はいっ!凄い、聞こえます!凄い!」
川崎側のスタッフの興奮が響く。
声は、届いた。
「もしもーし」 再び大声を出し、今度はすぐに紙コップに耳をつけてみる。
「もしもーし」 自分の声がやまびこの様に聞こえた。 川崎側からの声も届く。 「こんにちはー!」 「こんにちは!!」
糸電話で市外通話は可能だった。 そして、僕の思いを伝える事が出来た。
糸電話は糸の張りさえキープ出来れば、結構な距離でも届く事が分かった。
長い距離の糸電話に必要なもの。 それは糸の張りと、それを保つチームワーク。 通信とは「通じると信じる」と書く。信じていれば通じるし、通じていれば信じられる。 ん?
今度はオランダのファールスにあるオランダ、ベルギー、ドイツの三国国境で「糸電話で国際電話」にトライだ!