私はとくに阪神タイガースファンじゃない。そもそも野球をよく知らない。 なのに、今回の阪神の快進撃と優勝で、喜ぶ阪神ファンを見ても、ムッとしている他球団ファンを見ても、なぜかザワザワッとした。 何だろう、この感情。 何かに例えてみようとした。「成就しそうもない友達の恋が、いきなりうまくいって、電撃結婚しちゃった感じとか?……違うなあ。純粋に『お祭り』として楽しそうだから?……それはそうだけど、やっぱりなんか違う。……?」
優勝の決まった夜、テレビのニュースを見て決めた。 「そうだ、道頓堀行ってみよう。何かスッキリするかもしれないし」 9月15日、午後6時半に、東京のアパートを出た。 午後11時に、大阪に着いた。 (text by 大塚幸代)
えびす橋のうえ
新大阪駅から地下鉄に乗って、道頓堀へ行く。 電車の中は静かで「大阪はどこもかしこもカーニバル状態」なんて想像は間違いだった。冷静に考えてみれば当たり前だ。 でも20人に1人くらいの割合で、阪神のユニホームを着てる人がいた。さすがだ。
なんば駅に着くと、急にホームに人が多くなった。週末の終電まぎわの新宿駅のようなザワつき。 対抗して歩いてくる人の顔はみな、歓喜にあふれていた。……というか、優勝した瞬間から既に数時間たっていたせいか、「笑い疲れて半笑い」のような顔になっていた。
地上に出ようとすると、どーんどーんと地響きがして、六甲おろしが聞こえてきた。 そこで見えたのは、路上で、歌い騒ぎ、タイコ鳴らす、風船飛ばす、酒を飲む、阪神ファンの群れ、群れ、群れ。
よく見ると、歩いてる人の平均年令がやたらと低かった。20歳前後の人が、一番多かったんじゃないだろうか。
パトカーのスピーカーから「危険な行為はやめなさいッ」というヒステリックな声がした。大量の警官が立っていた。逆に騒ぎは盛り上がる一方。
道頓堀の水面が見えるところまで行ってみる。躊躇なく、人がポテポテと落ちていく。飛び込むのはほとんど若い男性だ。橋の欄干に立ち、両手を上げたりして皆をあおってから、スーーーッと落ちていく。 その様子を写メールで撮ってる人も多かった。
えびす橋(グリコの看板が見える、いちばん有名なスポット)を渡ってみることにした。 橋の上は人でみっしりで、まともに歩けない。「若くて元気な男性が多いから、人ゴミが崩れずに保ってるんだよなあ、これで女子供や年寄りが多かったら、筋肉も骨も弱いから、将棋倒しになっちゃうよなあ……そしたら死人が出るよなあ」とぼんやり考えた。 そんなみっしりな中でも自転車に乗ってる人がいた。大阪の人がマイペースって本当だなあ、とも思った。
水に飛び込んで、陸にあがってきた人は、なんだかボヤーンとしていた。放心しているのか、単に疲れたのか。 「ダイブのあとはドブくさい」という話をきいていたので、さりげなく近付いて匂いをかいでみた。そんなでもなかった。