僕らは角度に無自覚すぎないだろうか。
「身長は170センチぐらい」「駅まで2キロぐらいかな。」「このかばん5キロはあるだろう。」 長さや重さはだいたい見当がつくのに角度となるとよくわからない。
右の階段は何度だろうか?
27度だ。35度だとこうはならない。
角度は小学校の算数の時間だけに存在しているものではない。すべてのものに角度がある。
角度を意識していつもの景色を見てみたい。角度を再びわれらの手に。そこにはヘレンがウオーター!と叫んだときのような世界の再構築があるはずだ。
(今回のレポートで使用しているのは、スラントルールという傾斜を測る道具です)
(text by 林 雄司)
出会い
まずはやみくもに角度を測ってみた。興奮した。はじめて自転車に乗れるようになってどこまでも走っていけるような気分だ。
角度とったり!そう叫びたい気分だ。興奮のあまり電車に乗ってわけもなく東京駅に行ってしまった。
自動改札のsuica をタッチするところ
ベンチの背もたれ
なんとなく角度についてのカンが身についてきた。
階段はたいてい27度か28度である。エスカレーターは30度。座席のはじや背もたれが30度や80度ぴったりという数字から、設計した人の存在を感じる。角度は無為にあるのではなく、作られたものなのだ。カオスのなかから見えてきたのは人の存在だ。
そして東京駅で興奮した僕は意外なものを測る。