私は今年、戦争がはじまったとき、ひとり悩んだ挙げ句、「イラクの人が普段食べてるゴハンが食べてみたい、気休めだけど、そしたらちょっと何か分かるかもしれない」と思って、ネットでアラブ料理レシピを検索して、作ったことがあった。
その時の味と似ていた。トマトベースで、シナモン、クローブ、オールスパイス、コショウなんかを入れる。私が作った料理、そんなに間違ってなかったかも、と思いながら食べた。食べたら落ち着いてきた。
その食事の時、お世話してくれた女性信者は、日本人女性だった。誰かが彼女に「どうしてモスリムになったの?」ときいた。
「……理由は『すべてが気に入ったから』なんですが………以前、ニューヨークに住んでいたことがあって、その時知り合ったムスリムの人たちが、人間の基本に忠実に見えたんです。聖職者がいなくて、神様と直接対話できるところも、モスリム同士の共同体が仲が良いところも。生活そのものが、レリジャス(宗教的)なところが……」
女性は落ち着いた感じであった。今年生んだという赤ちゃんを抱きながら、静かに話す。年は聞かなかったが、私と同世代(30歳前後?)に見えた。いや実は、彼女のお顔が、中学生のときの同級生にそっくりだったのだ。もちろん別人なのだけれど。
日本人で、生まれた時からアッラーの教えを持っているわけでなく、自分で選び取り、こういう生活を東京でしている人がいるのだ、と思うと不思議だった。
レリジャスな生活はどんなものなんだろう、と想像したが分からなかった。
俗世に戻ってスカーフを取った私は、帰り道で缶ビールを買った。飲みながら、いただいたクルアーンを読みながら寝た。
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