「はやく!!! うつっちゃうから、通るなら早く行っちゃってくださあああい!」
男が私たちに叫んだ。映画か何かの撮影をしているようだった。奇妙なメイクをしている俳優らしき男が2人、撮影クルーが数十人いた。
「なんで通行人の私たちが怒られなきゃいけないんだ……」とむかつきながら、早足でぬけた。すぐに「ヨーイ、スタート!」の声が、後ろから聞こえた。役者はもうひとりの役者を殴る芝居をしていた。いったい何の映画だったんだろう?
四ッ谷に向かう途中、迎賓館の前を通った。四ッ谷に勤めていたこともあったのに、来たことなんかなかった。高い柵の中に、広い広い芝生、その向こうにお屋敷があった。
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