デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

特集


はっけんの水曜日
炎天下 中央線ウォーク

宗教施設が多くて静かな町・信濃町まで着くと、親子連れの行列が出来ていた。



ポケモンスタンプラリーだ。
みんな他に行くところがないんだろうか、私たちと同じように、お金がないのかな……なんて思いながらも、嬉しそうな子供を見ると、ちょっと楽しくなった。
信濃町を過ぎて、線路ぞいを歩く。線路の横の勾配に咲いている、草花がきれいだ。



「ああ、この花、花につけて『ニワトリ』ってやってみたことないですか?」
「え? 知らないっす」
「こういうふうに……」



「じゃあ、この草、こうやってくっつけて遊びませんでしたか?」
「なにそれ?」



えへへへ、と笑う。草で遊ぶことなんて、大人になったらめったにない。

千駄ヶ谷から四ッ谷までのところに、大きなトンネルがある。以前、知人のカメラマンに「ここ、撮影にいいんですよ!」と教えてもらった場所だ。面白いからそこで写真でも撮ろう、と思っていたのだが、よく見ると先客がいた。



「はやく!!! うつっちゃうから、通るなら早く行っちゃってくださあああい!」
男が私たちに叫んだ。映画か何かの撮影をしているようだった。奇妙なメイクをしている俳優らしき男が2人、撮影クルーが数十人いた。
「なんで通行人の私たちが怒られなきゃいけないんだ……」とむかつきながら、早足でぬけた。すぐに「ヨーイ、スタート!」の声が、後ろから聞こえた。役者はもうひとりの役者を殴る芝居をしていた。いったい何の映画だったんだろう?

四ッ谷に向かう途中、迎賓館の前を通った。四ッ谷に勤めていたこともあったのに、来たことなんかなかった。高い柵の中に、広い広い芝生、その向こうにお屋敷があった。




「こんなん、あるの知ってました?」
「知ってましたけど、見たことなかったですねえ」
迎賓館の前には黄色い鳩バスが止まっていて、年輩の人たちが楽しそうに記念写真をとっていた。その横の公園では、大学生のラグビーサークルが、練習をしていた。ヤカンを持つ女子マネージャーたちを見て、「こういうサークルにも、ぐちゃぐちゃの恋愛模様があるんだろうなあ」と余計な想像をした。

四ッ谷駅からはニフティの林さんが合流した。
「差しいれですよ、ほら!」
彼はコンビニで買ったヤキトリを差し出した。



私のもらった袋には、スナギモが入っていた。炎天下に肉! 大変申し訳ないのだけれど、まったく嬉しくなかった。飲み込むように食べた。




▲トップに戻る 特集記事いちらんへ
 
 



個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.