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特集


はっけんの水曜日
炎天下 中央線ウォーク

ここのところ、私は落ち込んでいる。理由はない、原因不明の憂鬱だ。
そんな中、パソコンと携帯が故障、大切にしていたデータが全部ふっとんだ。イライラは増殖、親しい人にあたったら、喧嘩して、嫌われてしまった。
最悪の夏だ……そう思って空を見た。阿呆みたいに晴れていた。
そうだ、落ち込んでいるときは、とにかく歩くと、けっこう気がまぎれるんだった。
私はウォーキングに出かけた。昨年は山手線を歩いたので、今年は中央線です!

(text by 大塚幸代


昨年「ひとり山手線ウォーキング」という企画をやって、膝を大変痛くしてしまったので、今年は中央線ウォークにしてみた。
中央線は新宿から東京を結び、東京のどまんなかを通る線路だ。全長で10.3キロほどある。
今回は友人のTさんも参加してくれた。言っちゃあなんだが、Tさんも相当な物好きだ。



実行したのは8月3日、冷夏と騒いでいたのに、いきなり暑くなった日曜日。新宿駅南口、12時30分集合。
「こんなに晴れるなんてねえ」
「信じられないですよねえ」
「…あ、おにぎり買ってきたんで食べます?」
「うん」
「そういえば、会社辞めるんですって?」
「そうですねえ……そうなんです」
「そうかあ…」
「大塚さんは最近どうです?」
「いやあ……フラれちゃいましてねえ」
「ほんとに?」
「ええ、まあ」
「そうですかあ……」
南口の木製デッキで、喋りながら昼食をとった。あまり食欲がなかったので、たらこおにぎりを喉に押し込んだ。

代々木まではあっという間だ。でも暑い。一歩歩くごとに汗が吹き出す。倒れてしまうと困るので、ペットボトルのお茶をきらさずに買う。
代々木は専門学校の町なので、夏休みの特別体験入学の看板が、あちらこちらに立っていた。



「これから何か学んでみるのも面白そうですねえ」
「何がいいかなあ…」
「パン屋さんとか、食えるものがいいかなあ…」
「パン屋さんとかはねえ、脱サラの人とか、年齢層広くいるみたいっすよ」
「へえー」
「リセットしたいなあ、いろいろと」
「でもやり直すのも面倒くさいっすよ」
「そうねえ…」
代々木をぬけ、千駄ヶ谷超えると、道が入り組んでくる。何度も突き当たりにぶつかりながら、引き返して道をさがした。



お互い、だんだん口数が少なくなっていった。
炎天下の中歩くという行為は、何かの修行みたいだ。汗がふきだし、頭の裏が暑くなる。ものを考えるのが困難になる。身体が体調を維持しようと、懸命に働いているのを感じる。頭と身体の
動くスピードがズレてきて、頭と身体が切り離される。モビルスーツに乗っているような気分になる。
どしゃぶりの雨にわざと濡れるのがすきな人も、この気持ち、分かってくれるんじゃないだろうか。



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