今回僕たちの他に男女合わせて11人の修行体験希望者がいて、そのうちほとんどが初心者だった。若い女性2人組や若いカップルの姿も見受けられる。水行道場の主管、戸田さんがそんな初心者たちに水行の指導をしてくれる。
「ここ琵琶滝での水行は南北朝時代から始まり現在にいたるまで多くの先輩修行者たちが修行をしてきました」
この滝の歴史から説明してくれるが、さっきまで山道を歩いていた時の暑さとはうって変わって滝場はひんやリとしている。行衣1枚に裸足という格好は徐々に体を冷していく。
「すでに寒くなって来ましたね」
「水なんか浴びたらどうなっちゃうんでしょ」
2人でコソコソと行く末を心配する。
「滝の中ではずっとこのように手を組んでいないといけません」
滝の中での手の組方の説明が始まる。
右手を上にして手を組み指先は全て内側に、両手の人さし指を立てて合わせ、両手の中指をそれぞれ親指でおさえる。
「人間の体は左半分が迷いや煩悩で、右半分が悟りとされています」
「ですので、こうやって手を組む事によって、迷いや煩悩を悟りで封じる。という意味があり、これを印といいます」
左手が上で、人さし指を立てて、中指を……
中々「印」の形を作れないが、滝に入るまでにはこの形をマスターしておかねば……。
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