うな丼(11:30)
うな丼がやってきた。キモのお吸い物もついている。キモはやたらと大きかった。
「お吸い物、胃にしみますねえ」 「いやあ、このウナ丼、なかなか………」 「ええ、なんともまあ………」 「………」
無言で食べた。美味しかった。
時計を見ると、もう12時になっていた。この店の物差しからみれば真夜中だ。 店を出ようとお勘定をしめると、ひとりあたま2千数百円だった。安い。
店外(12:00)
店の外に出ると、コイをしめていた人が、今度はスッポンをさばこうとしていた。 どこから包丁を入れるんだろうと思って、じっとながめる。 サクッ。調理人はスッポンの首のうしろに包丁を入れた。濃い緑色の肌から、赤い血がバラっと出る。ジタバタしていたスッポンは、すぐ動かなくなった。
「………すごい血ですね」 「そうですね」 「………」 「………」 「あのう、実はもう一件、赤羽に、朝からやってる店があるらしいんですけど」 「え、じゃあ行ってみますか………」 朝酒でボーッとした頭のまま商店街を歩いて、2件目に移動する。 乾物屋の前で、主人を待つイヌをながめながら、「犬には酒クサイのバレてるんだろうなあ」と思った。