ビールはうまかった。工場直送だとうまいのだろうか?
客はみな、それぞれひとりで黙々と飲んでいた。タバコを吸い、つまみをつつき、ビールを口に持っていく。
「(なんか………話とかしずらいですね)」
「(黙って飲みましょうか………)」
私は口の中に意識を集中した。煮込みはけっこう美味しかった。
しばらくして、ふいに店のおじさんが
「ありゃあ、ひどいねえ!」と声を出した。
おじさんの視線の先には、テレビがあった。店内の人はみな、テレビに集中した。
北朝鮮の餓えた子供の報道だった。
画面に映っていた2人の男の子は「17歳です」と答えていたが、どう見ても小学5、6年生にしか見えなかった。栄養が足りてないのは明らかだ。坊主頭で、そまつな服を着ていて、暗い顏をして、不安を打ち明けていた。「このままでは、みんなダメになってしまいます………」。
「………」
「………」
「………林さん、政治に詳しいですか? 私は詳しくないんですけど……」
「俺も、何か語るほどではないです………」
餓えた子供の顏を見ながら飲む昼酒は、ほろ苦い味がした。
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