メンチカツ(11:00)
メンチカツは頼んでから出てくるまでに、けっこう時間がかかった。揚げたやつをチンするのではなく、頼んでから衣をつけて揚げていたからだ。カウンターから厨房は丸見えだ。
ソースをぐるっと一周かける。
「ほら、来ましたよ………お、あつあつで、美味しいですよ」
「………」
「食べてみてくださいよ」
「………あ、はい」
「………どうですか?」
「………」
「………」
「………美味しいです」
「え?」
「うまいうまい。メンチカツってうまいですね」
イヤガラセのつもりもあったのに。残念だ。
「シメにウナ丼も頼んどきますか?」
「俺、腹いっぱいで食えないですよ」
「でもココの名物だし……やっぱ食べておかないと」
「………」
「………」
「………じゃあ頼みますか」
ウナ丼を頼んだ。
昼に近づくにつれ客も増えていく。8割がたの席は埋まり、店内もさわがしくなっていた。客も年配の人たちのほかに、若い男2人組、課長と女子社員という感じのカップルなど、バラエティにとんでいる。
みんな一体なぜ、こんな時間に酒を飲んでいるのだろう………私自身も含めて。
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