●裏切られた希望
地図によると、バス停「森」は千葉県・富山町の山の中にある。近くにはゴルフ場があったり、道に沿って川が流れていたりと、地図で見るだけでも森っぽさが期待できるロケーションだ。
近隣のバス停も「草刈場」や「神社」といった強者ぞろい。高ぶる胸をおさえながら、地図をたよりに車を運転しバス停にたどりついた。
…第一印象としては森というより薮、といったところだろうか。
もっとモリモリと森であることを期待していた私だが、そこまでの森っぽさはない。比較的広い道路のバス停でもあり、今ひとつ森らしさに欠けるというのが正直なところだ。
!? ショッキングだったのはそのバス停に書いている表示だった。地図では「森」だったのに「森前」になっているではないか。言っていることは大差ないとはいえ、「森」一文字である厳格さとやりきれなさは「森前」にはない。
●いろいろな意味ではっきりしない森
「森前」か…。
一体どういうことなのだろうか。気になったのは、妙に新しい感じもするバス停の表示。もしかしたら「森」ではあんまりだということで、割と最近になって「森前」に名前が変更になったのかもしれない。
必死に考えたそんな物語も、バス停横の待合所の存在によって打ち砕かれた。かなり古びたたたずまいは、はるか昔からここが「森前」だったことをうかがわせる。
…まあ、いつまでもめげていても仕方がない。「森前」という名のバス停であるならば、前が森であるのだろう。
そう思って改めてバス停の前を見てみる。うん、まあ、森だと思う。
結論をまとめてみよう。
・ 「森」は「森」ではなく、「森前」
・ まあまあ森 |
実に歯切れが悪い。
どうも釈然としない。わさわさした木々の中にひっそりとある、子リスたちが集うようなバス停を期待していたのだが、どうにもピントがずれた結果となった。
最後の写真は取材の道すがらに見かけた廃車。かなり森と化している。これはあくまで廃車であるのに、なぜだかはっきりと森っぽいのが皮肉にも見える取材だった。
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