それに対して、この缶詰はどうだ。
全く味が喧嘩していない。
まるで違和感がない。
違和感がないどころか、僕の舌では、どの部分がまぐろでかつおなのかよく分からない。
かつお缶と言われればかつお缶だし、まぐろ缶と言われれば、まぐろ缶である。
かつおフレークとまぐろフレークを足して2で割ったような味である。
商品名に目を向けてみよう。
この「やわらか煮」という名前の響きがいい。
ぐっとくる。
習字で書きたい。
どんな食材にもとりあえずこの名前をつけておけばいい気がする。
そういえば、グルメレポーターは「やわらか〜い」とよく口にする。
うちの祖母の味覚の表現も「やりこい」が8割を占めていた気がする。
煮る、焼く、揚げる、蒸す、炊く、その全てが食材をやわらかくする技術である。
もしかしたら人類の食文化の歴史は、食材をやわらかくする方法の模索とともにあるのかもしれない。
未来人の予想図をテレビで見たことがある。
頭でっかちで、顎が極端に細かった。
噛む力はこれからもっと弱くなっていくだろう。
食べ物のやわらかさは、これまで以上に重要視されるのではないだろうか。
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