洋梨ってこんな味だったのか「らふらんす」

淡いタッチの静物画を背景に、力強い書体で「らふらんす」。
「わたくしただの缶詰じゃございませんことよ」という上品な空気を感じる佇まい。

更にこの缶パッケージ、和紙のようにさらさらした質感の紙を使っている。見てよし触ってよし、細やかに高級感を演出してくるこのラフランス缶、そのお値段は298円。昨日、一昨日とレビューした桃缶の3倍近い。それなのに内容量は約半分。まごうことなき高級品だ。

ラフランス、つまり洋梨。
そういえばこれまでの人生において、この果実を生で食べた記憶がない。ケーキやゼリーに使われている洋梨は、大抵すでにシロップに漬けられている。

そう、ちょうどこの缶詰のように。

つまりこの缶詰を買い求める人の大多数は、そうしたお菓子作りに使うのが目的なのだと思われる。しかしそのまま食べて悪いということもあるまい。

ひとまず匂いを嗅いでみたら、なんだか醤油みたいな香りがした。
ラフランス農家の人がこれを聞いたら「そんな馬鹿なことがあるか！」とお怒りになるかもしれないが、実際この文章を書いている私も同じ事を思っている。そんなはずがない。

一口かじってみても、当然醤油の味はしなかった。私の嗅覚がどうにかしているということが確定した瞬間でもある。
柔らかく歯ごたえがなく、これぞシロップ漬け、という食感。

ラフランスってこんな味だったっけ。
自分に問いかけてみるが、そこに答えはない。ラフランス単体を食べた経験の乏しさゆえだ。

正体不明の甘くて美味しいフルーツを食べた。
正直、商品名を告げられなければそういう感想で終わっていた可能性も否めない。

頭の中ではラフランス農家が怒りの声を上げ続けている。ごめんなさい。

購入価格 298円
メーカー：明治屋

（四方静香）

( 2012/05/02 13:00:00 )