いつだったか知人の女性とペットショップに入った。 イオンだかなんだかの大きなショッピングモールの一階にあるペットショップで、休日だったためか、大勢の人でにぎわっていた。
店員に頼むと売られている猫を抱かせてもらえるらしかった。 彼女は猫が好きなので、店員に頼み猫を抱かせてもらっていた。その猫はアビシニアンという種類で、子猫なのでもちろん小さく、キラキラと輝く目は僕を見つめていた。彼女が抱いているのに、その目は僕を見ているのだ。
僕は動物が怖い。 猫も例外なく怖い。でも、彼(猫)の目は僕を純粋に見つめている。野球が好きな子供がプロ野球選手を見つめるような目線で僕を見てくるのだ。彼女も猫が僕を見ていることに気がつき、「抱く?」と言ってくる。
店員さんも「ぜひ」と言う。 僕はその勢いに負け「抱きます」と言ってしまった。猫が彼女から僕に渡される。僕の懐にやって来た猫はひたすら僕を見つめ、その次の瞬間に僕のコートをハミハミと噛み始めた。可愛い。可愛いのだ。怖いのに可愛いのだ。お化け屋敷やホラー映画が好きな人の心理がよく分かった。
家に帰ってきてからもあの猫のことで頭がいっぱいだった。 「ぜひどうですか?」という店員に「ずっと猫と遊んでしまい仕事が出来なくなります」と言って帰って来たのだ。それはウソではなく、あんな可愛い猫が家にいたら、ずっと一緒に遊んでしまい仕事が出来なくなってしまう。
彼女にそう言うと「いや、仕事できないとかじゃなくて、君の収入だと猫すら養えないから」と冷たい目で当たり前のように言われた。的確なことを言われて何も言えなくなった。そして次の瞬間、今まで彼女がそんなことを言ったことは無かったのにと思った。猫をかぶっていやがった。だから猫は怖いのだ。
そして、「明太マヨ」は美味しかった。 明太とマヨネーズはあわさることで、マイルドな味わいになり、ご飯と絶妙なハーモニーを奏でる。美味しくて、美味しくて、このおにぎりがもう子猫のように感じられる。この子は猫をかぶっていない。正真正銘の美味しさだ。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/01/17 21:00:00 )
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