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ローソンすじこ

ローソンすじこ
すじこ ローソン 139円(明日近所に100円ローソンがオープンします)

神社が好きだ。
別に歴史的に有名なものではなくて、田んぼの中にポツンとあるような、地元の人でも正式な名前を言えるかどうか分からないような、名も無き神社が好きなのである。旅行などに行くとそんな神社にふらりと立ち寄るので、その趣味に理解無き人と行くと、その人はほぼ例外なく不機嫌になってしまう。

そんな僕だけれど唯一歴史的に有名で好きな神社がある。
それは埼玉県は奥秩父にある「三峯神社」である。全国的に珍しいオオカミ信仰がある神社で、村の代表者が伊勢神宮に詣でる「お伊勢講」のように、三峯神社に詣でる「三峯講」なるものもキチンとある歴史ある神社である。また他ではあまり見ることのできない「三ツ鳥居」もあったりして僕の好きだという気持ちを加速させている。

三峯神社はうんざりするほど山奥にある。
だからなのか、そこを訪れるとここは地上なのかと思う。全く別の世界な気がするのだ。特に冬に行くと標高が高いために驚くほど寒く、音という音が寒さで固まってしまったかのように静かだ。

僕は神社が好きだけれど、神様とかは一切信じていない。
しかし、もし神様がいるならここだろうと毎回思う。神秘的という言葉がここ以上に合う場所を僕は知らない。本当に素晴らしく、神様がいても不思議ではない神社なのだ。

ただ如何せん家からは遠い。
車でもあればいいのだろうけれど、無いので、神奈川の僕の家からだと、電車を4つほど乗り継ぎ、バスに乗らなければならない。片道4〜5時間の旅である。秩父に近づくほどに電車の本数やバスの本数が減り、大量の待ち時間が発生する。そのため片道4〜5時間もかかってしまうのだ。それでも行く価値のある神社だと僕は思う。

いつだったかの冬、知人の女性を「三峯神社」に行こうと誘った。
一般に綺麗な風景や夜景を女性は好むと思うので、三峯神社の綺麗な風景はたまらないだろうと思ったのだ。そう思って、電話で誘ったのだけれど、彼女の顔が見えるかのような「行きたくない」という返事が帰って来た。彼女の「行きたくね〜」という不服な顔が電話なのに見えたのだ。

電話で相手の顔がこんなにも浮かんだのは初めてだった。
それも嫌だという顔が。三峯神社で僕は「いつか女性とここに来たい」と願ったのだけれど、その願いは全然叶わないようだった。三峯神社は素晴らしいけれど、やっぱり神様はいないのだ、と断言したい瞬間だった。

しかし、「すじこ」の美味しさには手を合わせたくなった。
たっぷりの「すじこ」は白ご飯の中では、宝石のように輝き、味も申し分ない。神様が宿っていると思う程に美味しいのだ。僕がすじこが好きなのもそう思う理由だろうが、おにぎり界でも、やはり「すじこ」は別格だ。おにぎり界の三峯神社だ。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/01/18 21:00:00 )




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