お風呂場の電球が切れてしまった。
仕方が無くお風呂場のドアを全開にして、部屋から玄関につながる小さなキッチンのある、短い短い廊下の電気をつけてお風呂に入った。その恐ろしく短い廊下の途中にお風呂場のドアはあるのだ。

廊下の明かりは、そもそもがそんなに明るくないこともあり、お風呂の中は、とても暗かった。それはたとえば、恋人の顔と恋人の妹の顔をギリギリ判別できないかな、といった暗さだ。

そんな暗がりで、シャンプーを流し終えたところで気が付いた。
薄暗いために、お風呂場のもはや主と言ってもいいかもしれない、汚れやカビといった嫌な物が全く目に入らないのだ。とても注意深く、たとえば間違い探しの間違いを見つける時みたいに見れば、多くの人が「ワ〜オ！」と声を上げそうな汚れに気が付く。しかし、注意深くしない限り、この薄暗さでは何も見えないのだ。

そこで僕はまた気がついた。
僕は長年「間接照明」の存在意義が分からないでいた。オシャレな人の部屋に必ずあるアレだ。「オシャレ＝間接照明」の図式が成り立つアレだ。僕としては、直接照らせよ！　と思っていたのだけれど、そういうことだったのかと急に腑に落ちた。間接照明は、よごれなどの汚いものを見ないでいいようにするための物だったのかと。長年の謎が解けて、気持ちがよくなり、普段よりも多くシャンプーをした。MACHERIE（マシェリ）である。

そして、僕は「オムライス」を食べても気が付いた。
そのあまりの美味しさに。玉葱の甘さを存分に堪能できるデミソースがクセになる。薄焼き卵によりデミソースは見えないでいるが、その奥ゆかしさもまたいい。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2010/11/21 11:00:00 )