いつだったか洗濯機を回していると、洗濯機から「カラカラ」という寂れた田舎町に転がる空き缶のような悲しい音がした。僕はその音を空耳に近いものだと思い込むようにして、完全に「カラカラ」と聞こえるのだけれど、意識的に耳を閉ざして聞こえないことにしていた。
しかし、その音は間違いなく聞こえるので仕方なく洗濯機の蓋を開け中を確認すると「しゃもじ」が入っていた。驚いた。僕は洗濯機から何をよそおうとしていたのだろうか。不思議で仕方がなかった。
僕は一人暮らしなのでしゃもじの一件もきっと原因は僕だ。一人暮らしが長くなると本当にいままでは考えられなかったことが起こる。僕がオープンな人間になったったのもその一つだ。それまでは閉ざして閉ざして生きてきたがオープンな人間になるという変化が起こったのだ。
何がオープンかと言うとトイレのドアを閉める習慣が全くなくなったことだ。最初は鍵を閉めなくなり、ついにはドアを閉める習慣すらなくなった。とてつもなくオープンだ。もし強盗でも押し入ってきたらどうしようかとトイレの中でいつも思うのだけれど、ドアを閉めるという決心には至らないでいる。不思議だ。
いま僕が誰かと一緒に住み始めるとどうなるのだろうと思う。8年くらい自由な一人暮らしのためきっと大きな喧嘩が起こることだろう。一度染み付いた習慣はなかなか抜けない。僕は一生ドアを閉めないのではないかと思うとゾッとする。
さて股割りだけれどこちらは開くと信じている。閉じることはなくどんどんと開いて行け! と思いながら、本日も股割りに励んだ。 ( 2010/02/25 21:00:00 )
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