デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


クラブ活動
 

くつ下と股割り

くつ下と股割り
クリスマスイブですね

駅の横にあった大きなクリスマスツリーが綺麗だった。
何年前だったか、僕は知人の女性とそのツリーの脇を歩き、ランチを食べようと喫茶店に入った。10人も入ればぎゅうぎゅうになりそうな店内には僕と彼女の二人しかおらず、窓から見えるビルの間に広がる空は灰色で、雪でも降り始めるのではないかと思った。

僕はランチメニューのオムライスセット(ティーがついてくる)を頼み、彼女はチャイとチーズトーストを頼んだ。まず僕のティーと彼女のチャイが出てきて、彼女は鞄からハイライトを出して火をつけ、僕も自分のタバコに火をつけた。「忙しい?」とか「今年は寒いね」などと言う話をした。時間という概念がないような静かな喫茶店だった。

彼女が2本目のハイライトに火をつけた時に、僕のオムライスが出てきた。彼女が「先に食べてて」と言い「タバコは吸っててもいい?」と続けた。その心遣いが僕の心をわしづかみにする。「あ〜やっぱり僕は彼女のことが好きだ」と改めて思う。彼女の吐き出す煙がパッションピンクに見える。

食事が終わり彼女がトイレに行っている間に僕はお会計を済ませた。トイレから出てきた彼女はそのことに驚いた。「え〜本当に! 払ってくれたの!」と。彼女は払うよ、と言うので僕は「いいよ、楽しかったし」と言うのだけれど「払うよ」と彼女は続ける。少し考えて「じゃ、ほっぺにでもキスをしてくれ」と僕は勇気を出して言ってみる。

彼女は「いや、それはない。お礼にくつ下を買ったげるよ。すごい温かいのを売っているお店があるから」と言う。その目はいままでに見たことがないような必死な目をしていた。例えようが無いほどの必死な目。だから結局、喫茶店を出てそのお店に向かうことにした。

彼女が買ってくれたくつ下は2000円くらいした(本当にとても温かかった)。喫茶店で僕が払った金額より高い。本当に悪いことをしたと思う。そして、彼女は「これで、チャラだからね」と念を押す。必死だ。何が、そんなに君を必死にさせるのだ。答えは僕なのだけれど、必死のベクトルが僕を幸せに導かない必死だ。世の中いろいろな必死があるんだと改めて実感した。

さて、股割りだけれど、こちらも必死だ。これは僕の目標を達成するための必死。だからクリスマスイブということを忘れて、本日も股割りに励んだ。 ( 2009/12/24 21:00:00 )




△いちらんへ

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ

個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.