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雨乞い部

上昇気流を起こす


上昇気流を起こす


 ここ最近、迷信めいたことばかり当てにしてきたので、今日は久しぶりに少し科学的なアプローチでいってみよう。「上昇気流を起こす」だ。


 上昇気流が雨を降らせる理由を簡単に説明しよう。山に登れば空気が薄くなるように、上空というのは気圧が低い。上昇気流がおこると、地上にある水蒸気がこの気圧が低い上空に押し上げられる。水蒸気は気圧が低いと存在しにくくなるため(理科で習った飽和水蒸気量というやつだ)、水滴になったり氷になったりする。これが雨となって地上に降り注ぐ、というわけだ。


 せっかく空まで上ったのに、また降らなきゃいけないなんてちょっと残念だ。地方からプロミュージシャンを目指して上京したものの、夢かなわず地元に戻る、みたいな感じだ。でも地元に帰るのもそんなに悪いことばかりじゃないと思う。地元には地元で、自分を待っていて暖かく迎え入れてくれる人が必ずいるからだ。実家の両親であったり、古い友人であったり。彼らがきっと、都会で傷ついた青年の心の傷を癒し、明日への希望を与えてくれるはずだ。
 雨にとって、こういった役割を担うのは、我々雨乞い部だと思っている。上空で傷心して帰ってきた雨を、暖かく迎え入れ、その帰還を心から喜んであげる。よし、久しぶりに飲みに行くか。いままでのこと、そしてこれからのことを、朝までゆっくり語ろうじゃないか。そんな暖かい存在でありたい。


 ということで、上昇気流だ。今回は扇風機を使って上昇気流を起こそう。


 ちなみにこの扇風機、結構侮れない。梅雨時に雨が多く降るのは、扇風機の影響だといわれている。6月というと、エアコンをつけるほどではないが、なんとなく蒸し暑いという微妙な気温の時期だ。そんなときみんなが扇風機をつけるので、各所で上昇気流が発生し、梅雨時は大変雨が降りやすくなるのだ。嘘だが。


 風力を最強にして、扇風機を寝かせ、首を上に向ける。おお、思ったよりいい風が出ている。これは雨が降るんじゃないだろうか。
 空気中の水分たちよ、都会に行っても体に気をつけて、ごはんはちゃんと食べるんだぞ。辛くなったらいつでも帰ってきていいからな。そのときは俺が温かく迎えてやるから。目尻からこぼれそうになる涙を、扇風機の風が乾燥させていく。三日三晩続けたら目尻から良質な食塩が採れるだろうか。


人口上昇気流発生装置なびく髪。す、すごいパワーだ



今日の結果 … 晴れ


 あいつは帰ってこなかった。大ブレイクはしていないものの、東京でスタジオミュージシャンとしてなんとか生計を立てているようだ。それが彼にとっての成功であったなら、僕は素直に喜んであげるべきだろう。がんばれよ、水分。盆正月と梅雨には顔見せにこいよ。

( 2007/06/02 02:00:00 )




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